48話 帰国
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軽いステップで、石の床を傷つけないように駆け回るトウカのすぐ後ろを僕も駆け抜けた。道は知ってるけれど、あちこち崩れて進めなくて、いちいち大回りをしないといけなくて、なかなか先へ行けなかった。とてももどかしい。
そういう道は、トウカに通れるようにしてもらおうかとも思ったけれど、彼は必死で城を穢す魔物を倒すのに忙しくてそれどころじゃないようだったから、止めた。魔物を見る度に憎々しげに目を吊り上げ、口を引き結んで戦う姿に何も、言えなかった。
僕達の目の前に飛び出してくる魔物はみたこともない種類ばっかりだった……茨で出来たドラゴン、中身のない鎧の魔物、金属が溶けたようなスライム……次々と叩き潰すように魔物が消えていく。そんな奴らは見たくもなかった。
それから、僕とトウカはすれ違うトロデーンの人々、一人一人に向かって、必ず元の姿に戻すことを誓っていった。
「全力で突き進まないと」
ぽつりと零した独り言はやけに大きく響いた。それに反応したのか、一瞬、びくりと肩を揺らしたトウカはさらに素早く魔物を倒し始め、その分回避が疎かになったので、回復をたくさんしなくちゃいけなくなったククールに恨めしそうに見られてしまう。
……正直、かなり要らない事を言った自覚はある。少なくとも、僕自身に向けての喝は必要だけど、トウカには要らなかったんだから。そんなことをされたほうが困るんだ。
「……力を」
もっと力を。
祈るように、乞うように落とされたのは、トウカの独り言。それを聞いた時、僕たちの心は一つになっていただろう……。
そうじゃない。君は既に力に溢れている、と。
力を本当に欲しなければならないのは、トウカじゃない。僕たちだ。
螺旋階段を全速力で駆け下りる。階段に居る魔物は勢いに任せた攻撃で吹き飛ばしてしまえば問題ない。充分に攻撃で倒すことも可能だし、階段から突き落とせば、体勢を崩した状態で呻く魔物のトドメをさすなんて簡単なんだから。
一階についた。密集して出迎えた魔物は気にもとめずに武器を振りかざして突破する。それだけでも結構な数が減るし、五人やれば追いかけてくる魔物はあまりいないし、いても弱っている奴らばかりだ。
一息に玉座の間の背後を駆け抜ける。図書室まであと、少しだ。
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