44話 再会
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たりしないんだから。初級魔法ぐらいなら剣で斬れる、と思うし。多分できる、かな。
私はそっとビーナスの涙をエルトに手渡した。
……さり気なく今は夜明けなんだよね。迷惑かなとは微塵にも思わない。白んだ空で真っ赤に燃える朝日に輝くビーナスの涙は、室内で見た時よりもずっと美しいね。
ゆらゆらと揺れる、かがり火に照らされたビーナスの涙はさながら囚われの姫。朝日に照られ青と赤の不思議な煌めきを醸し出すそれは、どちらかというと自由を謳歌する旅人の魂のようだ。囚われの姫は今すぐにでも開放してもらうんだけどね。
なんて、臭すぎる事を考えつつ。あれだ、前世でいう「厨二病」かな。今私、十八何だけどなぁ……いいのかな、それで。
「トウカや」
「はい、何でしょう」
ぼんやりと考えつつ勝手に傷ついていると、陛下が私に話しかけられた。いけないいけない、もっと護衛に集中しないと。考えこむのは悪い癖だ。
「お主、剣士像の洞窟でメダパニをかけられたそうじゃな?いや、責めているのではないぞ。そう、頭を下げずとも良い」
……私が護衛中じゃ無かったら土下座してたんだけど、流石にそれをしてしまうと周囲への警戒が充分じゃなくなるよね。だからしなかった。出来なかった。私の力量不足が全てを招いたのに。
なのに寛大でお優しい陛下はそんな不出来で注意散漫な私に温情を下さる。何と言うご慈悲か。まさに陛下は全てを超越なさる名君であられ、……。
「トウカ、口から全て出ておるぞ」
「申し訳御座いません、陛下」
なんてこった。私の、この矮小な存在が、陛下を賛美するだけで罪かもしれぬというのに、それが陛下のお耳汚しとなっていた、だって……?
「よくぞ魔術に囚われながらも魔物を倒したの」
「……、いえ。倒したのは本意では御座いませんでした」
「しかし、エルトはそう言っていたのじゃが」
「私は、魔法によって恐怖に取り憑かれ、無我夢中で目の前にいた化物……に見えた魔物を排除したに過ぎません。化物に見えていたのが味方だったら、……ゾッとします」
化物に見えていたのが、エルトだったら。ヤンガスだったら。ゼシカだったら。きっと、目を覆いたくなる最悪の事態になっていただろうね。あの場は、魔物が倒され、床石を砕かれただけだったけど……人が巻き込まれてたらミンチだ。そう、思うよ。
ククールは何故かあの場の人間の中で唯一いると認知出来ていたけど、私はそれでも敵意しかなかったし……。
偶然なんだ。全てが。私が味方を排除しにかかっていたら両方共怪我じゃすまないだろうし、その隙に魔物にやられてかもしれない。
「そうかの」
「はい」
ちょうどその時、ゲルダの家の見張り役の荒くれが、姫様をそっとこちらに連れてきた。エ
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