43話 混乱
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しまえ、化物!
拳振り下ろす。もはや化物は動かない。それでも怖くて、殴る。
「止めろ、トウカ!もう充分だ!」
「誰っ?誰なの、ねぇ、姿を見せてよ!」
不意に聞こえた声。妙に聞き覚えのある、知らない声。いきなり体が揺すぶられる。動かない化物と私しかいないのに、何故。怖い。怖くて声が聞こえたところを見て探す。やっぱり何も見えない。
「あなたは誰、ここは何処」
怖くなって、私はそれだけを虚ろに繰り返した。困惑したようなその声は、ぺちゃくちゃ喋る別の声と混じりあって、判別できなくなってしまった。
何故、こんなにも泣きたいのに涙が出ないんだろう。死んだから、涙が尽きたのかな……それとも私、幽霊なのかな……。
・・・・
魔物に魔法をかけられたトウカが、ふらふらと魔物から離れ始めた。あの魔法は、城での訓練で散々注意された「メダパニ」。かかってしまえば最後、正気を失って何を仕出かすか分からないと教えられた。
ある人はいきなり戦前逃亡したというし、ある魔物は同士討ちを始めたらしいし、ある実験では装備品を脱ぎ捨てて踊り出したっていうし、訳のわからない事を言い出すこともあれば、勝手に自爆して気絶することもあるとか。
かけられる寸前、トウカはそれに気づいて警告し、同士討ちの危険度を下げるために武器を捨ててもくれた。でも、それが何になるのか。トウカの圧倒的なまでの攻撃力を前にして、それはかすかな違いにしかなり得ない。
メダパニにかかったトウカは、いきなり怯えたように魔物から遠ざかったと思ったら転び、恐怖で顔をくしゃくしゃにして、定まらない焦点の目で魔物を見つめていた。すかさずかけられたホイミに傷が癒させると余計痛みを訴え、魔物に襲われそうになったら殴って吹き飛ばした。
何をするか分からないトウカにみんなは遠巻きで見ているしかないし、怪我を治せば痛がられるし、だからといって治さないわけにはいかないし……。
ふらふらとしたトウカが魔物を激しく踏みつける。混乱しても健在な圧倒的な攻撃力に魔物は為すすべもなくて。トウカが殴ることに移行した時には魔物は、ビーナスの涙をぽろりと落として朽ち果てていった。
えっと、討伐完了で目的達成、だよね?術者は死んだなら、魔法は解ける、よね?……解けてない。ついでに言うとゼシカのバイキルトも解けてない。何あれ危ない。トウカが魔法の効果を増幅させるのは知ってたけど、術者が死んでも続くなんて。
朽ち果てた魔物が青い光と共に消え失せても、トウカは何かに取り憑かれたように床を殴り、床がボロボロになっていっても辞めようとしない。見かねてトウカに近付いて、体を揺さぶり、目を合わせて言った。
「辞めろ、トウカ!もう充分だ!」
でも、無情な事にトウ
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