第百四話
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技……あれも元を正せば、こうして父から体当たりで教えられてきたものだった。子供心には虐待などと考えたこともあったが、そのおかげでこうして生き残っていると思えば、あの日々にはもはや感謝しかない。そんな日々を思い返していたため、辺りの騒音の内容までは聞くことが出来なかったが――俺は万感の思いを込めて、そろそろ痺れてきた手を離した。
……悲鳴が聞こえた気がする。
「さて……」
もちろん二人を突き落としただけ、とするつもりはない。恐らくボス戦が繰り広げられている水中に、不慣れな二人だけではは難しいことがあるだろう。装備を確認した後に飛び込もうとした瞬間――俺の目の前の水がゴボゴボと泡を立てた。
「ショウキ……くん……」
「ッ!?」
その声に瞬間的に身構えてしまったものの、よく見れば先程突き落とした筈のセブンが、そのまま水上へと浮かび上がってきていた。……いや、よく観察してみれば、セブンは誰かの肩に立って――
「スメ……ラギ……」
「…………」
セブンを肩車するように乗せた、水面から顔だけ見せたスメラギがこちらを見上げていた。ウンディーネ故に水場での問題はないのだろうが、顔だけ――しかも真剣な仏頂面でこちらを見上げて来るものだから、シュールを通り越してホラーな光景だったが。
「……セブンが面倒をかけたようだな。感謝する」
「あ、ああ……」
チラリとスメラギの肩の上のセブンを見てみると、有名なアイドルらしく、ニッコリとした笑顔をこちらに向けている。だが、あの笑顔の意味をリズで学んだ俺はよく知っている――『余計なことは言うな』だ。
「君たちのパーティーのおかげで随分楽が出来た。水中と最初に言ったのも君たちだしな」
そしてスメラギの口振りから察するに――どうやらフロアボスとの戦いは、もうこちらの勝利で幕を終えているようだ。スメラギが言う『君たち』の七人中二人は、ただ地上で遊んでいただけだが……とは、水面から真顔の生首を出すスメラギに、とても言うことが出来ず。恐らくスメラギは、ボスを倒して浮上してくる時に上からセブンが落下してきて、肩に抱えたまま水面に顔を出したのだろうが。とにかく陸に上がって来い。
「特に君たちのウンディーネ……彼女は獅子奮迅の戦いぶりだった……見ていたこちらが怖いくらいだ」
「ああ……まあ、今回は必死なんだ。アスナも」
第二十二層解放のために普段の鬱憤を晴らす彼女の姿は、見ていなくても目に浮かぶようで。他のメンバーも続々と水中から離脱してきており、それぞれの健闘を装備を乾かしながら称えていた。……申し訳なさすぎて、とても参加出来そうにない。
「理由……はプライベートだ、詮索すまい。だが事実、急場しのぎの水中用補助魔法が終わる前に、あのボ
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