第百四話
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「よし……ん?」
元より補助魔法を必要としないスメラギと他数名のウンディーネは、恐らくは水中にいるボスともう戦っていることだろう。ウンディーネにもかかわらず、補助魔法のために浮き島に残っていたアスナには後で謝るとして、遅れてはナイスな展開ではいられない――と、飛び込もうとした時。自らの視界の端に二人の少女が映る。
「ううん大丈夫よ魔法も使ったんだし理論上問題がある箇所がある訳じゃないんだからしかもここはVR空間でむしろ自分の感覚で研究する最高の機会じゃな」
「……っ…………」
水中と浮き島の境目とでも呼ぶべき空間。別々の場所で別々の二人の少女が、どちらも水中に飛び込むか否かで静止していた。何かに怯えるようにガタガタと震えているのが共通で、片や自分に言い聞かせるようにブツブツと独り言を呟き、もう片方は唇を噛み締めて我慢するようなポーズを取っていた。
「……あー。ユウキ。セブン」
『――――ッ!?』
その二人を放っておくわけにもいかず、それぞれ離れた場所にいる二人――ユウキにセブン――へと声をかけると、同じような反応が返ってきた。他のメンバーはもう全員水中に行ってしまったらしく、まだ見ぬボスも水中のメンバーへの対応で手一杯なのか、水の蛇も姿を見せなくなっていた。
「その……これは……違うんだからね! わたしが泳げないってことじゃないんだから!」
「ボ、ボクもだよショウキ! 泳げないんじゃなくて泳いだことないっていうか……」
「……語るに落ちてるぞ」
……大体その理由を察してはいたが、もはや理由を聞くまでもない。こちらの困ったように髪を掻く動作から、今まさに自分が言ったことを思い出したのか、またもや二人揃ってうなだれてしまう。さて、どうしたものか――と一呼吸した後、まるで出来の悪い生徒を説教する教師のように、自分の前に顔を赤らめた二人を並べ。
「単刀直入に聞くけど、泳げないのか?」
『泳いだことがない』
……言い回しはそれぞれ大分異なっていたものの、要するに似たような言葉が紡がれていた。泳げない、ならばまだ経験がない訳ではないが。泳いだことがない――というのは、これまでに初めて見る反応だった。予想外の反応相手にショートする俺に、セブンは自信満々に立ち上がった。
「でも大丈夫よ! 水の中で活動出来る魔法使ったんだし、すぐにでも行けるわ!」
「……じゃあ入ればいいだろ、水中」
「…………」
目を逸らされた。……このALOというVRMMORPGは、レベルよりは中のプレイヤー自体のスキルなどを重視しており、直葉や俺が剣道や剣術の技術を応用出来るのもそういう理由だ。ただそれは、現実で苦手だと思っていた動作もそのまま引き継がれるということであり、泳ぐ
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