第175話 荊州の新たな主 前編
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の雰囲気に気付きつつも至って冷静な様子で治療に専念していた。
「今日はこれくらいでよいだろう。孫文台、腕と脚の調子はどうだ。だいぶましにはなっていると思うが」
孫堅は正宗に言われ左右の腕を回したりした後に起き上がろうとした。蓮華は孫堅に駆け寄り肩を貸そうとしたが、孫堅は蓮華の助けを借りずに起き上がった。
「すごい! まだ痺れがありますが普通に生活する分には問題ないと思います」
孫堅は興奮気味に身体を動かしていた。
「母上、あまり無理をしないでください。正宗様、本当にありがとうございました」
そんな孫堅に蓮華は心配そうに声をかけた。
「これから私は黄承玄の屋敷に出向く用事がある。孫文台、お前は襄陽城に残りもう少し療養するといい。私が帰還する頃にもう一度診てやろう」
「黄承玄様の屋敷にございますか?」
蓮華が正宗に聞いた。
「黄承玄と約束していたことだ。黄承玄の夫と息子の件であろう」
正宗は重々しい表情で答えた。蓮華は合点がいった様子だった。
「蓮華、車騎将軍のお供をしてきな。車騎将軍、よろしいでしょうか?」
「別に構わんが。お前は良いのか?」
「全然問題ありません!」
「そうか。蓮華はどうだ?」
「私はできれば母の看病をしたいと思います」
蓮華は正宗に申し訳なさそうな表情で答えた。
「孫文台、そういうことだ。泉、では行くぞ」
正宗は孫堅に伝えると去ろうとした。孫堅は溜息をついた。孫堅は蓮華が側にいると息苦しいようだった。
「車騎将軍! お待ちください」
去ろうとする正宗に孫堅は呼び止めた。孫堅は両膝を着くと拱手した。
「孫文台、どうしたのだ?」
正宗は踵を返し孫堅の方を向いた。
「私の真名をお受けいただきたく存じます」
「良いのか?」
「是非にお願いいたします!」
孫堅は両膝を着いたまま一歩前に進み出てきた。
「孫文台、受けよう」
「私の真名は炎蓮です。私のことは炎蓮とお呼びください」
「炎蓮、私の真名は正宗だ」
「真名をお預けいただけるのですか!?」
正宗は頷いた。
「正宗様、ありがとうございます!」
孫堅は正宗に礼を述べた。
その後、正宗は孫堅と二言言葉を交わすと今度こそ孫堅の天幕を後にした。
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