第175話 荊州の新たな主 前編
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めていろ」
正宗は孫堅に言った。
「お気遣い感謝いたします。ですが心配無用にございます」
孫堅は正宗に力強く返事した。正宗はしばし平伏する孫堅を凝視した後、視線を逸らし誰もいない天幕の隅に視線をやった。そこには正宗が孫堅に褒美として下賜した銀が詰められた箱は詰まれていた。
「孫文台、心強い限りだ。褒美は届いているようだな」
「車騎将軍から賜った褒美有り難く頂戴いたします」
正宗はしばし孫堅を凝視した後、口を開いた。
「孫文台、孫伯符より既に聞き及んでいるな」
正宗は孫堅に視線を戻し何かを確認するかのように彼女のことを伺っていた。
「聞いております。軍規を乱し車騎将軍のお手を煩わせた身。謹んで車騎将軍の御下知に従わせていただきます」
孫堅は殊勝に声高に返事した。正宗は孫堅の態度を意外そうに感じているようだった。
「孫文台、長沙郡太守から更迭する」
「かしこまりました」
孫堅は正宗に拱手した。正宗は、それを確認すると一拍置き口を開いた。
「お前は失態を犯したが総攻めの切欠を作った。その功績は賞するに値する。よってお前を豫州刺使に任命する。豫州は黄巾の乱により戦火の傷が癒えず混乱している。豫州の民のために、その武を生かして欲しい」
刺使は州の監察を役目としてる。その官位は太守より低い。だが、太守からの付け届けがあるため実入りが良く出世コースといえた。ただし、太守のように軍を養うための経済基盤が貧弱ということだ。太守は郡行政の長であるため、郡の税収で軍を保有し維持している。
「謹んでお受けいたします。されど刺使では武をもって豫州の混乱を治めることは難事かと」
孫堅は正宗に言った。
「心配には及ばん。軍を維持にするための費用は冀州牧である余と南陽郡太守より支援する手筈となっている」
正宗と美羽が孫堅の後援となると明言したことに孫堅は表情を変えた。朝廷の意向を伺わずに豫州の治世に干渉しようという正宗の言葉は越権とも取られない行為といえた。だが、今の朝廷に混乱した豫州を安定させる力がないことも事実だ。
「朝廷はこのことをご存じなのでしょうか?」
「戦乱で混乱した豫州の地に刺使として下向するほど肝の据わった者はいない。それに豫州各郡の太守は現状維持で手が回る状況ではない。その証拠に士大夫達が荊州や他州に疎開している」
「しかし、名分がございません。刺使の身分で大規模な軍を動かすのは謁見行為かと」
「孫文台ともあろう者がその様な弱気を言うのか?」
正宗は笑みを浮かべ孫堅を見た。
「お前の申すことは一里ある。私は上洛を予定している。その時にお前を破虜将軍に上表する。これで問題はあるまい」
「車騎将軍、私に将軍位をくださるのですか
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