第175話 荊州の新たな主 前編
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いに医者は暗い表情で左右に顔を振った。
「清河王、劉g様を保護されることを具申いたします。今はそれが最善かと思います」
医者は神妙な表情で悩んだ末に正宗に言った。
「当然のことだ。そのために保護したのだ」
正宗は即答した。
「そうではございません。劉g様のお世話をする者達は清河王と太守様の息の掛かった者達を配置するべきだと申しております」
「どういうことなのじゃ」
先ほどまで怒り心頭だった美羽は冷静な表情で医者の方を向いた。
「劉g様はかなり薄めた砒素を長期間に渡り摂取したと思われます。しかし、劉g様の体調の変化に周辺の者が気づかなかったというのは解せません」
医者は言うべきか悩んでいる様子だった。
「先を進めよ」
正宗は医者に話を続けるように促された。
「荊州牧様はお気づきではないと思います。気付かれていたらこのような事態にはなっていないでしょう。しかし、劉g様の周辺で諸事をこなす家人が気付かないとはおかしいです」
「それは蔡瑁が家人に命じて劉g殿に毒を盛ったということか?」
正宗の問いに医者は口を閉じた。内容が内容だけに医者もはっきりと口にすることに抵抗があるようだった。
「穗乃香。兄様にはっきりと申せ」
美羽は厳しい口調で医者に言った。
「事実はわかりません。推し量ることしかできませんが、長期の間、特定の人物に毒を継続して盛るなど劉g様と全く接点を持たない者には不可能でございます」
劉gは医者の話に呆然としていた。自らの信じることができる存在が側にいないことに悲嘆し、あまりの喪失感から力が身体中から抜けたのだろう。
「劉g殿が連れてきた家人の詮議が必要だな。劉g殿、今から貴殿を余が保護させてもらう。身の回りの世話をする者達も余が用意しよう」
「それでしたら妾にお任せください。劉g殿、妾の屋敷に逗留してください」
美羽が劉g殿を思いやるように微笑を浮かべ劉gに声をかけ、彼女の手をとった。劉gは美羽に力無く頷いた。その様子を見ていた正宗は意を決したように口を開いた。
「劉g殿、余に病を診せてもらえないか? 余は治療の嗜みがある。治療できる可能性があるなら力になりたい」
劉gは心細い表情で正宗のことを見た。しかし、その表情は微かに正宗に救いを求めていた。医者が治療の見込みは無いとはいえ、生への可能性に縋るのは生きる者として当然のことだ。対して、医者は正宗の言葉に半信半疑の様子だった。医者には正宗が劉gを治療出来るわけがないと思っているのだろう。
「劉g殿、一度兄様に見てもらうといい。医術では無理でも、兄様の力で病が治るかもしれない」
医者は美羽の話についてこれない様子だったが、主人と劉gの遣り取りを交
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