39話 闇商人
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のは壊れそうな扉と、重い物を引きずったような跡が残る床と、拭えぬ恐怖心だけだった。
・・・・
「ゲルダというのは、女の人であるようだけど、どんな人?」
「性格のきつい盗賊でがす。一軒家にアジトを構えているんで、パルミドには住んでないでいないでがす」
「そう。交渉はできる?」
「……申し訳ないでがすが、素直に返すやつではないでがすね……」
「実力行使は?」
「あいつは頑固でがす……」
チッと隠そうともしない舌打ち。一層、膨れ上がる殺気と怒りに遠くの方に見えていた魔物がものすごい勢いで逃げていくのが見えた。あれは……サルみたいな魔物、かな。なんとかゴング?だっけ。
軽く現実逃避しながら、聖水よりも魔物を遠ざけるトウカのお陰で魔物と全く遭遇しない、ある意味ではとても平和的なフィールドを進んでいく。戦いながらではないから進む速度は何時もの比ではなかった。
でも、我を忘れているのか、何時もの軽い走り方ではなく重く体重を乗せて走るトウカのせいで怪しい足あとがまた出来ているのがなんとも言えない。そろそろ自覚して欲しいところだけど言っている場合ではなくて……。
「……殴っても蹴っても聞いてくれないなら、お金?それとも宝?なんだったら応じるのか……」
それから、我を忘れると心の声が駄々漏れになるところも自覚してほしい。たまに物騒な事も言ってない?いちいちククールも反応しないで……慣れてよ。
「ああ、姫様、どうかご無事で……!」
そういえば、普段「王家を守る」とばっかり言っているから忘れがちだけど、トウカって正確には「ミーティア姫の騎士」だったね……。幼なじみの僕もだけど、父親であられる陛下もだけど、気が気じゃないんだろうな……。
皆の心の内とは真反対によく晴れた天気で、空気は爽やか、風は気持ちよく……なんて言っている場合じゃないけど、そのせいでかいた汗をぐいっと袖で拭う。遠目に見えてきた堀の付いた家らしきものに向けて全力疾走をし始めたトウカを追いかけて僕達もまた、一層スピードを上げて駆け出した。
……、後で叱られたのだけど、陛下のことを何も考えていなくて、スピードを出しすぎたことを正座で反省することになったのはまた別の話だった。不敬だけれど、普段馬車で移動している陛下が僕達が全力疾走するまでは普通に付いてこられていたことの方にびっくりもした。流石です陛下と讚えるトウカは平常運行だった。
それから、ゲルダのアジトで、木の吊り橋を破壊しないようにトウカが橋を飛び越えていたのを、初めて見るククールが完全に引いていた。だからいい加減に慣れてよ。
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