38話 盗人
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「まずはヤンガスの言っていた情報屋さんのところへ行けばいいよね」
「そうだね。案内頼むね」
「勿論でがす」
すれ違いざまに財布でもスリ盗ろうとしたのか、怪しい男が笑顔のままのトウカに手を思いっきり弾かれて悶絶しているのを横目で見る。なるほど、治安が悪いな……。ああいう輩には絶対に近づかないとして。やはりトウカの隣は安全圏だな。
サラッとトウカが弾いた奴を踏みつけるエルトが怖いが、まあいい。ゼシカですら何の反応もせず、一番気にしたのがトロデ王なのもいい。俺の胃がそろそろ慣れてきたのは良い傾向か。
問題にしたいのはサラッとヤンガスが細い脇道に入ったことか。トロデ王を酒場に置き去りにする予定である所もだが。おい、トウカとエルト。大丈夫なのか、それ。
「陛下もお一人で過ごされたいときはあるんだよ」
「ボクは陛下の言葉の全てに従う。故に反論なんてないね」
「へいへい。聞いた俺が野暮だったよ」
せっかく心配してやったというのに、帰ってきたのは忠臣の言葉ってわけか。そりゃそれもいいが、本気でここは危ないんだぜ?ぬくぬく育った王国民とお貴族様じゃ分かんねぇかもしれないがな。何が起こるかも分かんねぇっていうのに……。
手慣れたヤンガスが階段に案内し、建物の上へ向かう。じゃりじゃりとした砂っぽい石畳をのろのろと気だるく歩きながら、ぬるい風に揺れるトウカの髪をなんとなく眺めていた。
・・・・
「陛下、情報屋は留守にしておりました」
「そうか。それは仕方ないの」
尋ねるのは今度出直すとして、彼が帰ってくるのは何時ぐらいだろう?何泊ぐらいするべきなのか、それとも望みは薄いけど、今まで行った町や村に行き直して新しい情報がないか探ってみるべきかな。
そんなことを呑気に考えていた時。外から姫の、大きないななきが聞こえてきた。明らかに、何かがあった。
「!」
報告していたトウカが、さっと素早く陛下に一礼すると矢のように速く外に飛び出していった。慌てて追いかけ、その先にいたトウカは側にいた道端の男を締めあげていた。男が意識を失いそうなのを見て、ヤンガスが慌てて止める。
そう、外には姫様はいなかった。勿論、勝手にどこかに行かれる方ではない。その上、さっき聞こえたのは間違いなく悲鳴。攫われた、……いや、この場合は不敬だけども、盗まれたと言うべきだろうか。
僕は、鬼気迫る勢いでその場にいた男を揺さぶろうとしているトウカをそっと止めた。僕は冷静だ。取り乱しちゃダメだ。今は行動はトウカに任せて、リーダーとして最良の判断を下さなきゃいけないんだ。この男から情報を聞き出して、ヤンガスに心当たりを聞いて、……。よし。
「この場であったことをすぐに言え。言わないとちょっと手が滑って君串刺しにな
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ