35話 月世界
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月という物は、どこの世界でも変わらず美しい。
月にはきっと神秘的な何かがある、と前世でもチラリとは考えていたけど、まさか本当にあるとはね……。流石は魔法がある世界。
「綺麗」
美しい月の世界に一歩踏み出すごとに心が浄化されるよう。蒼く上品な美しさは、まるでミーティア姫様や義母上のよう。ああ、ククールみたいでもある。私には似合わない綺麗な世界。
見事な美しさに惹かれてか、足取りすら軽く感じる。トントンと軽く飛び移るようにあちこち動いて、くるくると辺りを見渡す。あぁ、ここはきっと何時まで見ても飽きないんだろうな。しかもどこからか、これまた綺麗な音楽の旋律まで聞こえるし……。
「まさに奇跡……」
「びっくりしすぎだよ、エルト」
「そう、かな」
目をまん丸に見開いて驚くエルトやヤンガスやゼシカやククール。驚いたものの、すぐに平常の表情に戻られた陛下や姫様。私はただただ最初から惹かれていただけ。キラキラしてて、吸い込まれるようで……なんて言ったらいいの?これ以上言葉が見つからない。
「ね、行こうよ」
この月の世界の真ん中にはドーム状の建物がある。多分、その中に願いを叶える何かがあるんだ。そこにいるのは人じゃないかもしれない。
トン、とまた足取りも軽く飛び出せば後ろからみんなが追いかけてくるのが分かる。あそこに早く行ってみたい。何があるんだろう。
そして、着いた先には青く長い髪をした……人でない者が居た訳だけど。神秘的で美しい精霊が。
・・・・
イシュマウリと名乗ったその精霊の言葉を聞いた途端、さっきまではしゃいでいたトウカが不意に逃げ腰になった。そう、いっそ怯えたような。……でも髪の毛も何も変わってないんだよね。良いことだけど、それならなんで怖がっているの?というか、トウカは武器も持っていない彼が……人間じゃないからってそんなに怖いの?
「記憶というのは。物にも宿るもの。体にも宿るもの」
イシュマウリさんが鳴らすハープが澄んだ音色が僕らを包む。途端に僕達の靴が煌めく。音楽に共鳴したみたいで驚く。ただの靴のはずなのに。
「私にはあなたたちの望みが分かる。今は靴に聞いたのだよ」
「……靴に」
僕たちの靴に聞いたって?そんなことが可能なものだったの?
「私は願いを叶える者。さて……悲しみにくれる王の元へ向かおうか」
驚く僕達の前で、彼は再び手に持っているハープをかき鳴らしてみせた。
イシュマウリさんがハープをかき鳴らす度に、パヴァン王が求めて止まなかったセシル王妃……と思わしきドレスの女性が現れる。彼女の姿は透けていて、実際のパヴァン王は見えていないようだから……もしかして、過去の幻影、なのだろうか?
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