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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十一話 ベーネミュンデ事件(その1)
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若い側室が男子を産んだ場合、一番困るのは年老いた本妻との間に生まれた後継者だ。必ず側室と組んで自分を排斥しようとする人間が出てくる。ましてルードヴィヒの場合、母親であった皇后が死んでいる。ベーネミュンデ侯爵夫人が皇后になれば一気にそういう動きが出ると判断したのだろう。だから生まれてきた赤子を殺した。そういうことだろう。
俺と侯はまだ見詰め合っている、というより視線をはずせないでいる。
「厄介な事じゃの」
ポツリと侯がつぶやいた。俺は自然と頷いていた。
「ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯ですがこのことを知っているのでしょうか?」
「知っていたじゃろうな」
「……」
「本来なら、あの時先ず疑われるのは皇太子殿下であった。ところがあの噂が出た。おかしいと思うのが当然であろう」
「なぜ、お二方ともそれを言わなかったのでしょう?」
「皇太子への貸しにするつもりであったのだろう」
「……」
「それゆえ、二人とも激怒したのじゃ」
「?」
「判らぬか、まだ甘いの。激怒が大きければ大きいほど皇太子への貸しは大きくなるじゃろう」
「なるほど」
「ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯の勢力が一段と大きくなったのもそれからじゃ」
「それは、つまり……」
「皆知っておった、ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯が皇太子に貸しを作った事を、それで黙って従ったのじゃ」
つまり今日の元凶は皇太子ルードヴィヒか。どうしようもない馬鹿だな。
「ま、皇太子殿下も亡くなられた今では意味が無いが……」
そうでもない、肥大化したブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯の勢力はそのままだ。いずれ暴発するだろう。
「で、どうじゃ、引き受けてくれるか?」
「……手枷を嵌められるのは困ります。好きにやって宜しいのなら」
「引き受けるか」
うれしそうにリヒテンラーデ侯が言う。爺、また嵌めたか……。しかし、アンネローゼが関わる以上無視は出来ないだろう。どのみちラインハルトにも同一の文書が届くはずだ、となれば引き受けざるを得ない。いいだろう、乗ってやる。
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