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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十一話 ベーネミュンデ事件(その1)
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ことを不審がっていたし、ラインハルトは俺がフレーゲルを殺さなかった事に不満そうだった。いや、理性では判っているんだが感情では納得していないという事だと思うんだが、俺を胡散臭そうに見やがる。頭にきたんでそれ以来会いに行っていない。全くふざけた奴らだ。

色々話をして散会するまで一時間以上かかったろう。最後までラインハルトとキルヒアイスは納得していないような表情だった。あいつらってあんなに猜疑心が強かったか? 原作を読む限りそれほどでもないように感じるんだが……。そんな事を考えながら俺は警備を続けた……。

ローエングリンが終わり、観客が帰り始めた。俺の仕事もこれで終わりだ。そう思っていると、俺の名を呼ぶ声がする。誰かと思ってみるとリヒテンラーデ侯だった。
こいつが関わると碌な事が無い。俺は厄介ごとが手招きしているのを確信した。

■ 帝国暦486年7月15日  クラウス・フォン・リヒテンラーデ侯爵邸

「よく来てくれた」
「……」
俺は今リヒテンラーデ侯爵邸にいる。観劇の間で俺を呼んだ老人は“家に来い”と言い捨てるとさっさと帰ってしまった。呼び止めたかったんだが、周りに人がいる以上あまり目立ちたくない。仕方なく俺は今ここにいる。リヒテンラーデ侯爵邸の応接室だ。老人と差し向かいで座りながら、話を待つ。

「怒っておるようじゃな、許せ、卿の力を借りたくての」
「小官は閣下の部下では有りませんが」
「これを見てくれ」
リヒテンラーデ侯は俺の抗議をあっさり無視して一通の書簡を俺に差し出す。
「……」
俺が受け取るのを躊躇うとさらに突きつけてきた。どうしても俺に押し付ける気らしい。

書簡にはごく短い文章が書かれていた。
“宮中のG夫人に対しB夫人が害意をいだくなり。心せられよ”
ベーネミュンデ侯爵夫人か。
「これは?」
「今朝、家に届いておった。どう見る」
「ベーネミュンデ侯爵夫人がグリューネワルト伯爵夫人を害そうとしている……」
「卿もそう見るか」

リヒテンラーデ侯の声に苦い響きがある。
「あの婦人の宮廷人生は終わった。下賜金でも頂戴して田園生活にでも入ればよいのだ」
「小官にこれを見せる訳は」
「決まっておろう、事実関係を調べてくれ」
「小官は閣下の部下では有りません」
同じ事を何度も言わせるな。

「そんな事はわかっておる、しかし他に頼める人間がおらん。この手の問題はあまり大袈裟にしたくないのじゃ」
「……頼りになる部下をお持ちですね」
俺の皮肉にも老人は全く動じなかった。
「卿なら上手くやってくれるじゃろう、内密にな」

「引き受ける、受けぬは別に、一つ教えていただきたいことがあります」
俺が何を聞こうとしているか、想像がついたのだろう、リヒテンラーデ侯が眼を細めて続きを促した
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