30話 道中2
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に」
「……それもそうか」
「じゃあちょっと火をおこして」
ゼシカが無言で薪を積み上げてくれていたのでそれをかまどの中に組む。なんというか、ゼシカは大分疲れたみたいでぐったりしていた。そっと私の上着を肩にかけておいた。私のことを男だと思っているみたいだけど、実際は私も女だから……うん。気障じゃないよ。汗臭くはない、よね?自分の匂いとか、よくわからないから自信ないんだけど。
「ようし」
「ねぇ、あれは何をしたの?」
「トウカには火をおこすことを頼んだんだけど……って」
疲れてるゼシカが目を見開いてこっちを見ている。料理の手を止めて、エルトも。帰って来たてのヤンガスや、ククールも。え、私そんなに変な事、してる?単に火を起こそうと適当な枯れ草に向かって自前の火打ち石を叩いてるだけなんだけど。
「トウカ、火打ち石ってさ」
「何?火はついたよ?」
「うん、そうじゃないんだ。なんで叩き潰しちゃってるの?使い捨てじゃないんだよ?」
「分かってるよ?これだって初めて使う奴じゃないし」
なんだ、たまたま火打ち石が砂になる光景を見て私が火打ち石を使い捨てにでもしてると勘違いしたのか。新品の火打ち石をいちいち叩き潰す怪力馬鹿だと思ったのかな……ちょっと傷つくけどそんな勿体無い阿保らしいこと、しないし。したくもないし。
「……ゼシカ、そうらしいけど」
「あたしが言いたいのは火打ち石は使ったって砂にはならないってことよ。半永久的に使えるわよ」
「……。え、たまには砂にならないの?」
「なるわけないでしょ……」
お……私は些細なことでも人間ばなれしたことをしていたのか。初めて知った。 ……大昔の野営で義父上が火打ち石を砕いてたのは何だったんだ?
「あっしも叩き壊したことはあるでがすよ」
「……そう」
「ヤンガス、如何にも力が強そうな君がフォローしても……」
「ヤンガスでも潰すんだからしょうがないね、そういうことだから!」
「フォローにならないよって、……え」
エルト、私がそんなに傷つきやすい人間に見えたのかね……。ちょっとばかり普通より力が強いのは知ってるし。
・・・・
野菜を切るのはエルト担当、味付けその他はあのトウカ担当……。若干不安なのは俺がトウカの性別を男だと確信したからか。
楽しそうににこにこと笑うあの顔は、確かに少女めいた女顔だし、身長も男としては低めだが、あの力は気のせいでは済ませられなかった。再び、納得しようにも無理だった。俺は、自分が弱いとは思わないが、彼に比べたらただの軟弱野郎だろう。……ヤンガスですらな。
聞くに、エルトとトウカはトロデーン王国の近衛兵らしい。エルトもその細身に童顔な風貌からは想像出来ないほど力も剣の腕も強かったから、あれはお国
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