29話 道中
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平穏だった草原に、緊張が走った。それは簡単な話で、魔物が現れただけ。でも、命のやりとりをする以上、あたしたちは武器を構えて身構えたわ。
そして、最早普通のコトだけど、一番最初に動いたのは魔物ではなかったわ。勿論、目の前の魔物を切り裂きつつ突撃し始めたトウカ。
「……嘘だろ」
「アンタもさっさと戦いなさいよ」
「あぁ」
「……駄目だわ、意識が全部持って行かれちゃってる」
「あ、ああ」
何かトウカに幻想でも抱いていたのかしら、この男は。小柄でも彼は世界最強の剣士トウカ。それに気づかなかったのかしら?それに、目の前で繰り広げられた、頑強なはずの金属が粘土扱いされていたあれを見て、まだトウカが自分より弱いとでも思っていたのかしら。
「ふっははははははっ!あはははっ!戦え戦えっ!」
「ちょっと、トウカ!」
「トウカの兄貴、どこへ行くんでがすかーーっ!」
まだまだ新入りだったころには慌ててトウカを追いかけたあたしも、もう慣れてしまった、「ハイになったトウカが魔物を狩りながらどこまでも走っていく」構図。
エルトが追いかけ、ヤンガスが慌てるのは前と変わりないけど、もう分かっちゃったの。彼、放っておいても帰って来る。
でも、今はそのことよりも、隣で呆けるこのククールが問題ね。いくらトウカが間引いてくれたって、魔物はそれでも居るのよ?気を抜いたら怪我をして、最悪命を奪われるのには変わりないのに。
「ヒャドッ!アンタ、前を見て!」
「……っ、悪いな」
でもやっぱり初めて見る人間なら思わず呆然としてしまうのは仕方が無いかもしれないわ。ククールはレイピアを一応引き抜いたものの、戦いはあまりにおざなりで疎か。寸前までトウカの見事な剣捌きっぷりとか、パワフルなヤンガスの斧捌きとか、とても早いエルトを見ていたから、打突武器は……あの三人に比べてしまうとしょぼく見えるだけかしら。
それは失礼ね。そうだわ……後衛に回されるぐらい、エルトは回復魔法に期待しているのかしら。あたしが後衛にいるのは攻撃魔法を魔物に邪魔されないように打つためだから。
とりあえずククールについては「慣れて」としか言い様がないから置いておいて。あたしはとりあえずヒャドを唱えて前線の加勢するのだった。
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なんというか、想像以上にククールの動きがぎこちない。戦い慣れは……まあ、しているけど。ドニとマイエラ修道院を往復するぐらいは余裕だけどそれ以上ではない、みたいなね。対人慣れは……分からないけど、多分まあまあ。ここで一応魔物と戦えているのはひとえに慣れ、だよねぇ。ここらへんの魔物は何年も戦ってきたみたいだから。……新しい魔物が出たら危ない証拠なんだけど。
単騎突撃、なんて私はいつも
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