26話 決意
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パチンパチンと呪いが弾かれたり、魔法陣に吸収されたりする奇妙な音が響く部屋で、トウカは僕達の前で意識を取り戻した。起きた瞬間から意思の強い黒い目をくわっと見開かれ、無理やり捻り出したような掠れた声で訴えてきた。
「……力が足りない。足りなかった」
「トウカ……」
「私は慢心していたんだ。私は、自分が強者だと勘違いしていた。だからドルマゲスにだって勝てると思っていたんだ」
「兄貴……」
「ねえ、事実はどうだった?私は人質を取られれば動けなくなったし、その前も一太刀たりとも入れられなかった。エルトが吹き飛ばされるのだって止められなかった。それに、私……あいつの言葉に動揺してたんだ……なんて未熟な精神だろう。あいつの言っていたアーノルドなんて、知りもしないっていうのに……!」
暴れることを防ぐため、ベッドに無理やり縛り付けられ、全ての武器を取り上げられ、頑強な防具まで奪われたトウカは未だ体に纏わりつく呪いのせいか、やや青白い顔で、まくし立てる。
同時に発生する赤い魔法陣がトウカの呪いを解き続けているから、すぐに呪いには勝てるだろうと、それまでは安静にしておくようにとトウカを看た神父様は言っていた。その神父様は、腐りきったマイエラを信じない僕がドニまで行って呼んできた人だった。
「……トウカ、落ち着いて。今は呪いを何とかしないと」
「これを私は制御は出来ない、勝手に発生している魔法陣に何をしろと言うんだ?エルトこそ、大怪我だったろ?」
「あんなに沢山のアモールの水が降り注いだらどんな傷でも癒えるに決まってるよ……ヤンガスもゼシカも必死だったんだ」
僕はもう、完治したんだ。未だに泣きそうな顔して、でも泣きはせずに顔をくしゃっとさせて行き場のない怒りを、苦しみを持つトウカのほうが心配に決まっている。
不意にすっと、普段防具に覆われて見えなかったトウカの腕が伸ばされる。どこからあんな怪力が出るのだと聞きたいぐらいの……筋肉は確かに付いてるけど、その割に細い腕が伸ばされる。トウカの手を女の子みたいだ、と以前称したけど、まさにその通りの腕を。
……ちょっと待って。しっかりと縛ってた縄は?……うわ、木っ端みじんじゃないか……。そうだよ、鉄格子でやれるもんね、トウカには縄なんて障害にすらならないのか……。
「なぁ、エルト。私はどうやって守れば良かったんだ?」
「……分からないよ。僕だってトウカとやったことは一緒だから」
僕だってトウカより先に弾かれただけでやったことは全く同じだった。トウカの方がより長く戦っていたんだから時間だけでも稼げていたんだ。
「……私は」
ぶちりぶちりと太い縄が切れるのを無視してトウカは起き上がる。引っかかりすら感じさせない動きに、安静にしても
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