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剣士さんとドラクエ[
25話 対峙
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鞭打った。

「……アーノルド?」
「よくもエルトをッ!」

 恐らくこの不気味な人物、ドルマゲスに此処まで困惑した表情をさせたことは珍しいだろう。大剣を手酷く弾かれ、とっさに大剣を捨てて腰の双剣を引き抜き、またしてもそのとんでもない脚力で襲い来る凶剣士を懐かしい者でも見るように、しかし不可解そうにドルマゲスは見つめていた。

 そして、彼女にとっては理解のしようのない言葉をかける。不思議なことに、親しい者に言葉を掛けるかのように。

「……アーノルド、何故攻撃する?何万年ぶりの再会なのかもしれないというのになあ」

 話しかけられている剣士トウカは、一切アーノルドという人物に覚えはなく、ただひたすらに忠誠を誓う主や養い親、そして傷つけられた親友の為に戦っているだけであった故に、言葉に返事すら返さず再び突撃しようとしていた。

「……もしや、父がアーノルドなのか?今の姿が違うから分からないのか?……お前は誰だ?」
「……!」

 攻撃を何度防ごうとも身につけていた、夥しい数の武器を手に襲い来る剣士にとうとうドルマゲスは標的オディロを人質にトウカに迫った。彼を殺すわけにはいかない彼女はじりじりと下がりながらも口を開くしかなかった。

「……義父上は貴様にトロデーンで茨になった!お前なんて知らない!」
「……他人の空似か、見苦しい人間」

 ややがっかりしたように言い捨てたドルマゲスは、そのままトウカを壁でぐったりとしている団長マルチェロや倒れる聖騎士ククール、ようやくゼシカとヤンガスの手で意識を取り戻したがまだ倒れたままのエルトのように吹き飛ばそうと、事実その三人を吹き飛ばした動きと同じ動作をした。

 が。巻き起こった衝撃波はトウカを叩きつけようとはしなった。

「……っ」
「何故だ」

 人質によって手が出せないトウカに傷一つつくことなく、ただその背後の壁にひびが入っただけだったのだ。トウカの背後には衝撃が加えられている為、間違いなくドルマゲスにとって目障りな剣士は衝撃を受けた筈である。

 しかし、受けた当の本人は禍々しいまでに憎しみをこめたアメジストの瞳を一層つり上がらせて睨みつけているだけで、一切ダメージを受けていなかった。巻き起こったはずの爆風ですら、何も感じなかったように。

 ドルマゲスは当初の目的でもない人間を殺しに来たわけではない。そのままさっさと人質であるオディロを殺さなくてはならなかった。

「……アーノルドによく似たお前に贈り物をしようか」

 しかし、ドルマゲスにも興味はあった。

 オディロに杖を突き刺すと同時に窓へと浮かび上がり高笑いをして空へ消えていったドルマゲス。最後まで武器を手にしていたトウカには、あの日の同様の悲劇の呪いが襲いかかっていた……。
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