22話 亡霊
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
だ。そういえば、この場所が廃墟なのは疫病が流行ったからだって、聞いたな。
なんて哀れな人か。ただ祈るように呻き、魔に犯された体は最早言うことを聞かないんだろう。
「……ゼシカ、ヤンガスを支援して攻撃!ヤンガスは魔神斬りを!」
……トウカの為にも、この人の為にも早く終わらせないと。呻く声に、たまに言葉が混じっているのが、微かに聞こえる。神よ、救いよ、助けて、苦しい……そんな声が。
「きゃっ!」
「ゼシカ!」
邪悪な紫の光が亡霊の手から発せられる。それは勢い良く後衛のゼシカにぶつかり、ゼシカは吹き飛んだ。唸りを上げて斬りかかるヤンガスの攻撃も、効いてはいるだったけど、死人に痛みなんて無いのだから動きが鈍るはずもない。
僕はゼシカにホイミをかけてから、勢いをつけて亡霊の背後から襲いかかる作戦を取る。進む力を利用して槍を突き付けに、駆ける。でも、亡霊は僕が迫ることを人間を超えた速度……トウカでもやるけど……で僕に振り返り、手を向けてきた。杖が振られる。……嫌な予感がするけど何かされるより先に攻撃すればいい、よね。
「オオオオォォォオオオオオオオッ!」
「うわっ!」
言葉にもならないおぞましい叫び声と共に、炸裂した火炎の中級魔法。僕の使えるギラの上位転換ベギラマだ。それをほんの顔の先で放たれた。……なんとか直撃は避けたけど、火傷は流石に……。
「大丈夫でがすかっ?!」
「ヤンガス!後ろ!」
すぐに駆けつけてきてくれたヤンガスも亡霊のベギラマの餌食になってしまう。再び赤い光を亡霊は手に灯す。このままじゃ、後ろで警戒しているゼシカも、危ない!ああ、なんてことだ。それだけじゃない。このままここでトウカに魔法が飛んだら、魔法に弱いトウカが無事なわけがない。早く、この亡霊を……!
取り落としていた槍まで跳ぶ。バッと振り向く亡霊からはベギラマがまた飛んでくる。今度は避ける余裕はなく、そのまま自分からぶつかって突っ切った。燃え上がる炎に囲まれて痛みが激増するけど、そこを気にしている暇はなかった。炎に囲まれていた僕の動きは見えていなかったようで、無防備になった今しかチャンスはない。
痛みを堪え、渾身の力でトドメとして心臓を貫いた。勢いをつけて……ひと思いに。磨きに磨いた鉄の槍は煤けていたけど、それも構わず、亡霊を貫き……亡霊、いや、「彼」は朽ち果ててゆく。
その姿が輝き、塵となって空気に溶けてゆく。槍から伝わる手応えが消えてゆく。同時に天から光が降り注いだ。僕達にも。それはとても温かな光、柔らかな光……彼が二度目の死を迎える。
「オォ、神ヨ今ソチらに向かいマス……!」
一層眩ゆくなった光が、視界も何もかもを包み込んだ。
じくじくと痛んでいた傷までも和らいでいくの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ