21話 跡地
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分からない、けれど彼の目は何時にもまして鋭く、険しかった。
確かに、この奥にはとても邪悪な気配を感じる。それが、トウカの痛みの原因なのだろうか。
目の前の魔物を切り捨て、彼は剣を収めた。そのまま手袋に仕舞う。そして、群がる魔物を蹴り飛ばした。いつの間にか、武器をすべて仕舞ったようだった。
「相当、……やばいね。剣すら掴んでいられない……」
頼もしく、誰よりも強いと思っていた彼はとうとう、よろめいた。
それでも素手でどれだけ魔物を倒しているのかしら。あたしやヤンガスでは到底無理な数を倒していく。遠くのエルトにアモールの水を遠投したり、仲間に降りかかる攻撃を弾き飛ばしながら、進んでいく。一歩進む毎に邪悪な気配と濃厚な魔力を感じる。
原因……彼が前にこうなったと言うリーザスの塔との共通点は魔力、かしら。種類こそぜんぜん違うけれど、魔力に溢れている空気には違いないわ。魔力が濃いと気分が悪くなる、ぐらいなら聞かない事も無いけど……ここまで顕著なのは見たことも聞いたこともない。じゃあ、違うのかしら……。
もう、トウカの顔色は真っ青を通り越して死人のようだった。時折、ちかちかと魔力がトウカの周辺ではじける。火花のようにトウカの周りで魔力が何故か爆ぜ始めたの。あたしのメラも、それに影響されたのか不規則に揺れた。
「……トウカ!もう進むのは無理よ!」
「大丈夫、私はまだ大丈夫。ほら、エルトも帰ってきた……」
「トウカの兄貴……」
トウカを見て、慌てて駆け寄ってくるエルトにトウカを見て貰おうとすれば、さっと彼は身を翻して逃げた。まだ動けるよ、という意味らしいけど、もう貴男だけでも戻るべきよ。
「……先の方の報告すると、扉があった。中をうかがってみたらアンデット系の魔物が一体いたよ。魔力の根元みたいだった。それを倒せばきっとトウカも良くなると思う」
「……近寄るのは勘弁してもらいたいね」
「瓦礫がいっぱいあるから魔物に遠くからぶつけてくれるだけで助かるんだけど」
「……私はいつ、剣士から投石マシンにジョブチェンジしたの?」
「それだけ話せるなら大丈夫だよね……」
それはそうかもしれない。辛そうではあるけど喋ることにさほど支障はないみたい。繰り返すけど、顔色は死人よ。何喋らせてるのよ、と思わないでもないわ。
「で、気になってたんだけどさ。トウカの髪の毛って点滅式?」
「……また白くなってんの?」
「……なってないわよ」
「魔力が光るときにトウカをよく見れば分かるよ」
魔力がぱちんぱちんと、やけにトウカの周りだけ弾け始めた。さっきから爆ぜているのよりもずっと早く。確かに、よく見れば弾けるごとにトウカの髪の毛が真っ白に染まっているように見える。これは……何の現象かしら。あ
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