20話 恋
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寝たんだろうか。
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滑らかな白い頬の彼女に惹かれた。女ったらしと呼ばれた俺がだ。情けないとも思うが、今はそんなプライドはどうでもいい。どうしようもなく惹かれてしまったのだから。鎖帷子を纏う、戦乙女が。好みのタイプではないはずだが、一目惚れに理論はない。
柔らかに耳の下で結われた茶色の髪、大きくぱっちりとした左目。如何にも優しげな表情。ボク、なんて紡ぐアルトの声。どうしても、あの瞳を両目とも見てみたい。小柄な彼女が愛らしい。俺の頭は妄想を止めてくれない。
何よりも悔やまれるのは惹かれた彼女にではなく、彼女の姉であろうこれまた素敵なレディに聖堂騎士団の指輪を渡したことか。勝ち気なナイスバディの彼女も魅力的な女性だった。だからか、傍目にも目立つレディに指輪を渡してしまったのだ。
大層な剣を背負い、全て本物かは分からないが武装までしていた逞しく勇ましい彼女に、女々しい行動をとってしまったら取り返しがつかない。ああいうレディは女々しいなよなよした人間が嫌いなもんだ。だから、俺は彼女には握手だけ、した。手袋を慌てて外す姿が小動物と重なった。
綺麗な手だった。ほっそりとした繊細な指の持ち主だった。指にタコもあかぎれもない、皮が硬くなっているわけでもない。到底剣を扱う人間の手ではなかったと思う。あれは守るべき少女の手だ。剣が本物なのか、やや疑わしいぐらいだったが、鎖帷子の金属音は本物のようだった故に定かではない。剣が本物なのかは分からない。
それから、彼女の仲間なのか、はたまた兄らしき青年は彼女を「トウカ」と呼んでいた。彼は彼女と仲が良く、羨ましかったがどうやら彼女を男だと勘違いしているようだった。……性別を間違えている以上、兄ではないか。にしても……あんな巨大な剣を細身の彼女が持てるわけがない。気が付くのが普通じゃないか。
ともあれ、俺は彼女が男装をしなくてはならない理由が分からなかったのだ。だから仕方なく少年にでも接するような態度をとった。本当は初対面から口説きたいもんだが、彼女は姉同様、それに乗るようなレディではなさそうだった。
……緊急事態になんという妄想をしているのか、俺は。今はレディのことを考えている場合ではない。オディロ院長の危機だというのに、なんて馬鹿なことをしているんだ。どうにかして院長の安否を確認しなくてはいけないというのに……クソッ、あの石頭共がいなかったら……。
「あ、昨日の赤い聖堂騎士団員さんみっけ」
「……ククールだ」
なんといういいタイミングか。悶々と考え込んでいる俺の眼の前に現れたのは昨日の彼女……と、その仲間だ。
彼女はこの修道院に起きている異変にその仲間と同じく気付いているようだった。真剣で真っ直ぐな目に思わず見と
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