20話 恋
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「あと二時間……」
そっと自分のベッドに腰を下ろしたところで、トウカがむにゃむにゃと寝言を呟き始める。大半は何言っているかいまいち分かりにくい滑舌の悪さ。……って寝言に僕は何を期待していたんだ。太陽が出てるのに爆睡してるのを呆れてたのにうっかり別の意味で説教かますとこだよ。
にしても……寝言を聞くのは初めてかもしれない。最近でこそお金の節約の為に部屋が一緒だったりするときもあるけど、親友ではあったけど、それ以前にあまりに大きい身分差があって。僕が見るトウカは何時もしゃんとしていた。眠そうな姿は見ても寝癖なんかない、身なりのきちんとした貴族のトウカしか見たことが無かった。
兵士のトウカはそれはそれで、鬼気迫る勢いの、必死で昇進を目指すがむしゃらな姿ばっかりだったから。そりゃあ、ふざける姿だって見たし、軽口だって叩き合った。けど、それだけだったから。
「おやつ……食べたいな……」
「……」
「マシュマロ……」
「……?!」
今、めちゃくちゃはっきり言わなかった?……僕はトウカの趣味を新しく知ってしまったのかな。トウカはあまり好き好んで間食はしてなかったはずなんだけど……。普段からおやつなんか食べてたっけ?あんまり甘いのも食べてなかったような。
え、もしかして内緒にしてたとか?……いやいやいや。トウカもバリバリ働いているし、給金も貰ってるんだからおやつぐらい食べたっていいんじゃないか?家では食べてたとか?それは知らないけど……。でも給金を使うところがないって、トロデーンでこぼしてたような気もする。
「あははーー、マシュマロ」
随分と楽しそうだな…………ぼ、僕は寝言を言わないよね。言ってないよね?いろいろ無自覚な願望とか口から垂れ流してないはずだよ、ね。うん、大丈夫。……だよね。こんなはっきりとした実例見てたらちょっと自信なくなってきた。早起きが得意なトウカより先に起きたことはないし、実はもう聞かれてるかもしれないなんて、気のせいだ。
なんか、かなり居たたまれなくなってしまった。勇ましい上に戦闘狂な親友の女々しい趣味なんてこんなところで知りたくなかった。今度口にマシュマロを詰め込んでやろうか。……辞めとこう。喜んでも怒られても今以上に居た堪れなくなるだけだろうから……。
「……爆発……しろ……ぶつり……てきに」
「…………」
恐ろしく空気が不穏になったから僕は部屋からそっと撤退した。音を立てていないことだけは確かだけど、寝ぼけたトウカがどんなのなのかを知らない今、剣を持っていようが槍を持っていようがすごく心細い。うん。逃げたんだって。 そこは言い訳しないさ……。
その後、日が沈んでから部屋に戻った時にはトウカはいなかった。朝起きたら既に陛下の所にいたし、トウカはちゃんと
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