14話 航海
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魔法が使えなかったら?兄さんみたいに戦えなかったら?ただの非力なだけの女の子だったら?今のあたしからすれば考えもつかない、あたしだったら?
「それでも敵討ちにいこうとしたかもしれないし、諦めたかもしれない。諦めたなら、君はこれから経験するであろう苦難の道を歩まないね。旅は危険で、犠牲がつきものだ。その上、仇討ちとなると……ね」
言葉がしみる。言い返せない、なにも。彼の言葉にのまれる。
「君は年頃の女の子。可愛らしい女の子だ。でも魔法が使える君は非力じゃない。だからこそ、ボクは心配なんだよ……。ドルマゲスならボクたちが倒すからさ、君は安全なところに居て欲しかったなぁ……。あぁごめん、別に今更仇討ちを止める気はないよ。ただの、ボクの愚痴さ。……ということにしてよ。
ボクがもっと強くて、もっと色んなことができたなら。ボクはドルマゲスに追いついて、リーザスに向かう前にドルマゲスを倒していたなら。そんな力があればよかったのに……。
……ただ、君みたいな子が、戦場に行くのは、なんて残酷なんだって思っただけさ……ここまで言っていてなんだけど、気にしないでね、ごめんね」
「……それを言うなら、あなたもよ。ドルマゲスと戦うのは厳しいものでしょう?貴男が強くても」
「あは、ボクは良いんだよ。どうせ……この旅がなかったら自由なんてなかったんだし」
「……流石にそんな事はないわ」
「あはは」
乾いた笑いだった。
「……ん。ま、いいや。取り敢えず、力を過信し過ぎちゃあいけないよ。あいつはとんでもない強敵だからさ。
で、さ!魔法ってどんな感じ?どんな感じで魔力使うの?」
「……え、魔法……?」
「魔法を食らった感想でもいいよ!ボクさぁ、机上の空論でしか魔法を語れないんだ!やっぱり使える人がいるなら聞かないとね!」
あんなに過信するな、無理するなと念押しした次に、切り替えられた話題はこんな質問。彼の年齢は知らないけれど、少なくともエルトとそうは変わらないはず。だから、こんなにきらきらと目を輝かせ、期待に満ちた笑みを浮かべるなんて思いもしなかった。朗らかに笑うとがらりとその印象は変わった。好奇心旺盛な少年。楽しそうな少年。そんな感じだった。
「……、弱くするから食らってみない?」
「殺さないでよ!ボクは魔法に滅茶苦茶弱いんだよ!」
「あんなに強いのに?」
「ボクは強くなんかないよ?魔法に弱いし、魔法は使えないし!」
「魔法は過信しちゃいけないんじゃなかったの?」
「使えるならそうさ。使えないボクは最大限に警戒する」
手甲と手袋によって重厚に固められた手が軽やかにひらひら振られた。そして彼は身体を解すように伸びをする。目線はエルトとヤンガスが居る所。二人は話し込んでいるふうではなく、単に並んで座っているだけに
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