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剣士さんとドラクエ[
14話 航海
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なのね」

 サッヴェラやゴルドだけならまだ、親が熱心な信者なのかなとも思うけど、アスカンタはともかく、サザンビークにまで行くとは、庶民のできることじゃない。それどころか彼は事も無げに「世界中」と言ったのだから。

 はためく茶色の髪の毛を鬱陶しそうに払いのけ、腕組みしながら立ったトウカは少し苦笑した。その意味は少し分かりかねる。詮索するなと言う意味なのか、そのとおりだという意味なのか。でも、行動に粗野な素振りはなく、むしろ上流階級の人間なのだと思わせる。戦いでは違ったけれど、あの強さの前ではそれすらどうでも良くなるだろう。

 オセアーノンとの戦いではとんでもなく強いその剣の腕前と、戦いに対する固着心を見せた、彼。見えている左目は意志が眩しいほどに強くて、とても鋭くて。そんな人なのだから、てっきり努力を惜しめないような環境にいた人なのかと勝手に想像していた。

「……坊ちゃんという訳じゃないよ。ボクはそんな敬われるような人間じゃないから。……でも、まぁ、家はそうかな……一応、貴族だし……」
「やっぱり?何か立ち振る舞いが洗練されてるわ」
「……そう。で、ゼシカさんは、」
「ゼシカでいいわよ」
「じゃあ、ゼシカ」

 だからかな。彼が気になっちゃった。恋じゃなくて、純粋な興味として。もちろん、その強さも。失礼だけど、格好いいというよりも、随分と可愛らしい顔立ちをしていて、そんなにがっしりとしているわけでもなく、小柄なのにあんなに強いんだもの。今日的であるドルマゲスを敵討ちとして倒したいあたしとしては興味がある。

「アルバート家は、名家だけど……名家のお嬢様としての、気負いとか、重責とか、そういうのは……気にならないかい?あ、喧嘩したばっかりに悪いんだけど」
「構わないわよ……でも、あんまり考えたことはないわね。もちろん、感じないわけじゃ、ないけど……」
「ボクは……いつも感じてるんだ。もうボク以外にまともな後継者はいないし……みんなは期待するし……」
「そんなものなの、トロデーンの貴族って」
「あはは、ボクってね、魔法に堪能な家系の末裔の癖に魔法が使えないんだ」
 
 出会ってすぐの君に愚痴ってごめんね?

 彼はそう言って、少し口をつぐむ。 考えこんで、また話しだす。

「笑っちゃうよ。幼いときから魔法に対する知識をこれでもかとばかりに詰め込んだ期待の子供が、いざ魔法を使わせてみれば、全く魔法が使えないって分かるんだから。……なんでこんな話、ゼシカにするか分かる?」
「……分からないわ」
「君は見たところ魔法が得意だね。だからドルマゲスを仇討ちしようと思えるよね。……もし君がただの非力な女の子だったら、どうしてたんだろうね?ボクはそれが心配でならない」

 すっと胸が冷たくなった。

 もし
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