12話 活気
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「え、なになに?魔物退治だって?なにそれ楽しそうだね、それ、ボク達に任せてくれない?」
邪魔するのはよそうと思って、そっと身を引こうと思ったら、僕の隣でいきなりトウカが言い争いに口を挟んだ。怪訝そうな船員さんにトウカは身長ほどもある大剣を片手でやすやすと引き抜いてみせる。それを見せつけられた船員さんは驚いて後退りした。かわいそうな船員さんを尻目に僕はトウカの肩を叩く。それは、「驚かないほうが無理があるよ」「少しは自重してくれ」という意味だ。
「これでもボクは腕っ節には自信があるんだ。ゼシカさんも困ってるし、ボクたちも船に乗りたいんだ。魔物退治ぐらいで船に乗れるなら、是非ともやらせてよ」
その時、いっそ清々しいぐらいにトウカは笑っていた。ああ、今、「僕達」って言ったね……僕らも巻き込んでまで、バトルしたいのかな……。勿論単騎で突入するんだって言われても着いて行くけどさあ……。
「この人もそう言ってるし、船を出してよ」
「……分かりました、ゼシカお嬢様」
ええ……。結局、乗り気なのはトウカだけじゃないの……ってヤンガスまで、見てみればノリノリじゃないか。なんだか胃が痛い。
……そうだ、潔くスパッと諦めよう。諦めてしまおう……正直、ちょっと強い魔物程度なら僕もヤンガスも必要ないんだよね。それくらいトウカが強いから。勝率は聞くまでもなさそうだ。……でも心配だから絶対に行く。最高にテンションの上がったトウカほど、防御を顧みない人はいないから。
「準備はいいの?」
「ん?ボクは何時でもドルマゲスと戦えるつもりなんだよ?エルト、ヤンガス……準備は?」
「僕はいいよ……」
「あっしもいいでがす!」
弾んだトウカとヤンガスの声と、若干げんなりとした僕の声が対照的だった。船出の準備をしながらこちらを見たさっきの船員さんが憐れむようにこっちを見ていて、余計にげんなりした。この、巻き込まれて戦いに連れて行かれる疎外感は結構身にしみた。
僕はその海の魔物にダメージを与える為に尽力する必要はあまりない。ダメージソースはトウカとヤンガスだ。僕のやるべきことは最前線で戦うトウカとヤンガスにホイミを浴びせかけること。怪我した瞬間に治していけばいい。それ以外には最近覚えた攻撃呪文を試してみたいから、このチャンスにやってみよう、……そもそも魔法が効く敵なのかな……?
船に揺られ、軽く現実逃避しながらも、新しく買った鉄の槍を構えた。まだ、海は穏やかだった。
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