11話 復讐心
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ウカが言う。一人にしてくれと言って彼女は泣き崩れていた。痛ましかったけれど、あの場に残るよりも、僕らは彼女の言葉に従った。
「彼女、仇討ち、するのかなぁ」
僕の知っているトウカらしくない無感動な声。ただただ事実を述べ、その次に自分の憶測を淡々と言っただけのよう。思わず振り返ればやっぱりトウカは無表情だった。たまに彼はそんな風に表情を消す。……それは、猫みたいに気まぐれで、だけどちょっと怖い。
そういう時のトウカは人間味よりも合理的だった。でも、そんなトウカは何時でも正しかった。選択肢はいろいろあっても、非難されてもなお、一番正しかった。
「すると、思うな」
「やると思うでがす」
「実に無謀だね。まぁ、それはボクたちもだね……でもね、ドルマゲスはあまりにも強い」
サーベルトさんが殺されたその場にいたわけでもない。トロデーンでドルマゲスを見かけた訳でもない。ただ、その場所に残る痕跡だけでも、感じられるほどの、圧倒的な強さ。それを僕たちは理解したのだ。
「彼女、魔法が使えるけど」
そっとトウカの目が細められ、浮かんだ感情は二つ。ひとつは哀れみ。
「多分、ドルマゲスの方が上だね」
そしてもうひとつは悲しみ。
・・・・
「……親子喧嘩を目撃しちゃった訳ですが、エルトさん」
「なかなか激しい口論だったね」
「兄貴たちは冷静でがすね……」
「え、だって魔法とか斬撃とか飛び交わなかったでしょ?」
「トウカの兄貴の親子喧嘩はそんなに危険なんでがすかっ?!」
……夫婦喧嘩なら何度か目撃しちゃったけど思い出すのも恐ろしい、さながら戦場だったなぁ。二方ともとんでもない実力だったし……。高名な騎士と名高い魔導師の戦いだった……。
そんな中、なんでもないように平然としてたトウカには絶対に流れ弾が行かないんだよなぁ……。たまたま居合わせた僕にもこなかったけど、僕とトウカじゃ全然近さが違う。おじさんとトウカは同じソファーに座っていたけど、僕はもう少し遠くの、ドアを開けてすぐぐらいの部屋の端に居た。でもトウカは少しでも身じろぎすれば斬撃や魔法が簡単に触れるぐらい近くにいたんだよ……。
「え、あ、うん。たまに、ね。でも本人の目の前で教育方針の事とか言われても反応に困ったなぁ……」
「教育方針、でがすか」
「父上がよく、『そんなに剣を極めにかかると知っていれば文官教育にしたのにっ!』って言ってたし、母上も『私の子は戦う文官にすべきでした!』って……そんなにボク、剣向いてなかったのかな……ちょっと傷ついたな」
「……そうじゃないでがす、多分理由は違うでがすよ……」
ヤンガスは事実を察したみたい。建物とかの破壊事件こそ、起こさなかったけどトウカが剣豪を何人も叩きの
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