31部分:第三十一章
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第三十一章
「安土桃山時代の人だけはあるよな」
「その時代を拠点にしてるんだね、やっぱり」
「さて、ここで決着をつけようぞ」
ヒデヨシはまた博士に告げてきたのだった。
「それでよいな」
「よかろう」
博士はその変形した巨大車椅子の上に腕を組んで立っていた。そのマントが風にたなびきバタバタと音を立てていた。
「行くぞ、よいな」
「それではじゃ」
ヒデヨシはその両手をゆっくりと大きく左右にあげた。すると天空に突如として暗雲が立ち込めてきたのであった。それは実に不気味な雲であった。
その雲が瞬く間に空を覆い尽くした。するとその雲から次々に無数の落雷が降り注ぐのであった。
「何っ、落雷!」
「おい、危ないって!」
「これは流石に洒落にならないよ!」
小田切君だけでなくライゾウもタロも驚きの声をあげる。
「このままじゃ。死ぬぜおい!」
「早く避難しないと!」
「そうだ。こういう時は」
小田切君は咄嗟にその左手の時計を見た。その時空を自由自在に行き来できる時計である。その時計はそれだけではないのであった。
「これを使って」
「時計をか!?」
「それを使って元の時代に戻るの?」
「ううん、ここはね」
彼等に応えながら時計のあるボタンを押した。するとそこからビニールハウスが出て来た。そして忽ちのうちに小田切君達を覆ったのであった。86
「これでよし」
「これってシェルターか?」
「ひょっとして」
「そうだよ。ビニールだから雷は通らないし」
小田切君は自分の側に来ている彼等に答えた。
「しかも特別のビニールだから熱も無効化するしね」
「へえ、そりゃ凄い発明だな」
「じゃあ雷もこの中にいれば」
「そう。安心だよ」
また彼等に対して答えた。
「何かあってもね」
「よし、これで安心して戦いを見ていられるな」
「落雷の音は凄いけれど」
そればかりはどうしようもなかった。話をしているこの時点も落雷が豪雨の如く落ちてきている。特殊ビニールのシェルターがなければとても生きていられないものであった。
彼等はその落雷から身を守りながら戦いの流れを見ていた。落雷は博士の周りにもひっきりなしに落ち博士を車椅子ごと破壊せんとしていた。
しかし博士はその中にあっても。全く動じるところはなかった。そうしてそのうえで言うのであった。
「ふむ、面白い演出じゃな」
「面白いか」
「雷は神の裁き」
神話においてはよくそう考えられている。ギリシア神話ではゼウスが、北欧神話ではトールがそれぞれ使うまさに神々の必殺の武器である。
「まさに演出に相応しい」
「ただの演出だと思っているのか?」
「如何にも」
博士の不敵な言葉はここでも健在であった。
「雷程度でわしを倒せると思っていたか」
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