10話 異変
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くかけてくれたけど、ホイミは一切効いてない。
「……」
「辛くなったら言ってよ?」
「分かったけど、……痛い」
「トウカがそこまで言うなんて珍しいね……」
塔を登れば登るだけ痛くなる。とうとう最上階に着いたとき、痛みは弾けるように増大した。同時に原因も発見する。
「……!」
痛みで涙で潤んだ目に飛び込んできたのは美しき女神像……の目。今世では養子とはいえ貴族、あのサイズの宝石を見慣れたはずの私でも、世にも美しいと思わざるをえない赤色の宝石。それが両目に嵌っている。ふと、少年たちが警戒していた盗賊を思い出す。これを狙っていたんだろうか。
そこからは、魔力が全くないはずの私にさえ何故か分かってしまうほどの濃厚な魔力が発せられていた。そして直感する。この痛みの全ての原因は、あれか。
魔力にあてられているのか。無い故に。今まで魔力にあてられたことなんてなかったのに。むしろ私は周りが呻くほど濃厚な魔力の中でも動じず感じず、だったのに。これも無い故に。
傍目には本当に呑気に考えれてはいるけど、体は限界だ。手からは力が抜け、気力で掴んでいた大剣が滑り落ちる。石畳に激突した大剣からガランと大きな音がする。
操り人形の糸が切れたかのように、へたり込んで膝をつく。強烈な痛みを発す右目を抑える。痛すぎて、声なんてあげられない。
「トウカ?!」
「兄貴!」
音も遠ざかる。何とか聞こえてはいる二人の声すら無視して、あの、燃えるように赤い宝石を睨む。あれが痛みの元なんだ。私から、力を奪ったんだ。唯一、私が誇れるものを。
義母上や義父上に認められ、私が私でいられるものを。私が剣士であるための、力を。私がモノとリアであるために必要なものを。
必死に、這うように、宝石へとにじり寄り、手を伸ばす。その行動は息を呑むほど美しい宝石を砕いてやろうとか、どこか遠くへ捨ててやろうとか、思ったわけではない。だけど何故か手を伸ばす。何故求めたのかは後から考えても分からなかった。
だけど、全てを知った時の私なら思い当たることはある。私は魔力に惹かれたのかもしれない、と。恋焦がれるかのように、幼き日に欲した魔力を。もっともっと認められるように願ったとき、私はいつも「魔力がない」ということに全て、阻まれたのだから。魔法の使えないモノトリアなんて、と。
・・・・
・・・
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