9話 悲壮感
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れはここいら一帯を統治しているアルバート家、かな。
って、待って。開いた扉からトーポが家に飛びこんだのが見えたんだけど。こそこそ入る気はないけど、人様の家とはいえ、流石に鼠を放ってしまったなら回収しても怒られない、よね。なんでいつもはポケットの中で大人しいのに今日に限って飛び出すかな。
こっち来い、みたいな素振りもあったけど……なんで?
「すみません」
「……何かな」
明らかに急いで息を切らして走ってきた旅人なんて怪しいに決まってる。分かってる。村の奥にはこの建物ぐらいしかないんだから用がここにあるに決まってる。だけど、喪に服した家に走ってくる馬鹿なんて普通はいないんだろうな。
……僕だってこんなに慌てて走りたくはなかったよ……。横で息を整えるヤンガスにめちゃくちゃ警戒してるし……この守衛さん。当たり前の反応だけどなんか心に刺さる……って刺さっている場合でもない。
「僕の飼っている鼠が今、抜け出してこの家に飛び込んで行くのが、見えました……」
「何っ」
「まだそこまで奥には行っていない筈です、入れてくださいますか」
「……まぁ、元より入るのは自由だ。さっさと探してくれ」
かすかな同情の目線で見られた。え、何これ恥ずかしい。
しかもトウカは走りもせずのんびりと散歩のように来た。腹立たしい。急がなくても見失わないよって、嘘つけ。少しでもトーポが向こうに行ってしまう前に追いかけないと!
……余談だけどトーポはペットじゃなくて僕の家族だけど……こういう時にわざわざ説明まではしていられないから「飼っている」なんて言ったけど、本当はすごく嫌だ。
・・・・
・・・
・・
・
「さて、と……」
私は剣士だから、気配を探ったりするのは戦いに身を置くものとして心得ているつもりだ。だけどもそれは人間や邪心を持つ魔物や危険な動物限ってのことであり、正直小動物は専門外。
最近知り合ったヤンガスよりはトーポのことを知っているかもしれないけど、エルトと比べてしまえば私なんて……名前と見た目しかわからないよね。残念ながら見つけれる気が一切しない。いっそ素晴らしい程、きっぱり言い切れる。
「……ボクはメイドさんとかに聞き込みするからね」
「早々に探すのを諦めたね?」
「流石は十年付き合いのある親友だ、分かってるね」
「そんなに自慢げに言われても……」
「ぶった斬ったり、突き刺したり、ぶん投げたり、すっ転ばしたりするのは得意だけどボクは探し物みたいなカンが必要なことは苦手だよ」
「トウカ自慢の野生のカンはどうしたの」
……戦いにならそういうのは使えるんだけどね。殺気とか、敵意とか、闘争心とか、悪意とか。そういうものはいくら隠されたって私には分かるから、野生のカ
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