6話 親子
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ああ、うん……。そうだよね、見た目はどちらかといえば痩せていて、そんなに力も無さそうに見えるトウカから物が奪うのは、見た目だけなら簡単そうだけど……無理だよ。やるからにはでっかいボストロールを連れてこないと。それでも危ういかもしれないっていうのに。トロル何匹必要なんだろう?兵士でも戦士でもないルイネロさんならバイキルトをかけようが、豪傑の腕輪をはめようが無理な気がするな……。
つるつるの水晶球をしっかと、手袋をしているにもかかわらず掴むトウカ。平然としていてとても力を込めているようには見えない。ただ持っているだけみたいだ。……でも、多分ものすごい力が加わっているんだろうけど。水晶球の強度が心配だ。かたや奪おうとするルイネロさんは顔が真っ赤だ。
数十秒粘ったのち、ルイネロさんはとうとう諦めてトウカに頼んだ。眼中にないと言うかのように、話しかけられて初めてトウカはルイネロさんを見る。
「その水晶玉を渡して下さるか、ご客人?」
「……これは貴男の物ですか」
「そうだ。だが、……私が滝の洞窟に捨てた。今度は二度と返って来ないように粉々に砕かなくてはならん」
「……そうですか、でしたらなおさら私は水晶玉を渡す事は出来ません」
トウカは相変わらず無表情で、冷たく感じる黒色の目には何の感情もない、ルイネロと対称的な風体だった。これは、結構怒っている。感情的な怒りじゃなくて、トウカのプライドに触れる冷たく静かな怒り。
トウカはユリマさんに頼まれて、ユリマさんのために水晶球を取り返したつもりなんだろう。ユリマさんの手に渡った後、ルイネロさんがユリマさんの考えに反して砕いてしまってはいけないと思っている……と思う。僕は推測ばっかりだ……。
「私は、ユリマさん、貴男の娘さんに頼まれて滝の主から水晶玉を奪って来ました。ユリマさんは、水晶玉を砕く事を歓迎していませんから……、ボクはユリマさんに従って……貴男に水晶球は渡しません」
声は低く、とても重々しかった。風もないのにトウカの髪の毛がゆらりと揺れる。「ぼく」ではなく、「私」と言った以上、トウカは「トウカ・モノトリア」として渡さないつもりなんだ……。
「……家族って、いいですよ。時にはユリマさんの話も聞いてあげてはどうでしょうか。私は……あなたがたが、家族としての絆を取り戻すのを願っていますから」
あなたはユリマさんの本当のお父さんじゃないでしょう。でも、それを知っている上でユリマさんはあなたを本気で心配しているんですから。この水晶玉をどうか砕かないであげて下さい。
トウカはそう、無表情のまま、そう言い切った。僕の知らなかったことをどこで知ったんだろう……トラペッタでは一緒にいたのに……。
ルイネロさんは、それからユリマさんは、互いに
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