6話 親子
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トラペッタの街ですれ違う様々な人々に大なり小なり怯えられ、それを完全に無視して歩き通す。怯えられた原因の殆どはトウカかもしれない。そして、街の人達が怯えるのが分からないでもない僕自身がとても腹立たしいし、怯える街人にはなんでお前たちが怯えていて、一方的にトウカを悪者にするんだという怒りもある。もやもやして落ち着かないこの状況は複雑だけど、当のトウカは表情すら変えないんだから今は気にしないでおく。
そのまま僕らは談笑することもなく一直線に目的地の井戸の裏の家へ急いだ。先頭を行く僕はとても後ろが気になったけれど、振り返っている暇はなかった。
「水晶、取り返してきましたよ……ユリマさん?」
一抱えもある大きな水晶玉を持ったトウカは眠るユリマさんをらしくもない無表情でじっと眺めていた。
ザバンの、水が伝えたというトロデーンの話を聞いてからはトウカはどうも黙りだった。トロデーンの生き残りは二人。そんな話を聞いてから。陛下や姫も生き残りと言えばそうなんだけど、呪いを受けられてしまったからから数えないのかな……。
呪いといえば……僕にしてもトウカにしても、変な紋章にめいめい守られていたよね。見る限り全然種類は違うようだったけど、効果は一緒だよね。…………、僕の紋章は呪いをかき消していたけど、トウカは吸い込んでいたような……?何だったんだろう……。
「……あ!すみません、すっかり寝入ってしまっていて……。取り返してきてもらってありがとうございます!これで、父も……」
トウカが近寄るとすぐに目を覚まして、ばっと顔を上げたユリマさん。その言葉を遮るように、台所からぬっとユリマさんのお父さん……占い師ルイネロが姿を現す。その顔には怒りというか、悲しみというか……色んな負の感情を混ぜたようなものが浮かんでいて、壮絶だった。
……そういえば。ルイネロさんの妻はどこにいるんだろう。つまりユリマさんの母親。亡くなってしまった、とか……?でも、その割にはあまりにもユリマさんとルイネロさんの関係が二人だけで完結しているような……?いや、人の家庭に口出ししても仕方ないし、邪推はいけない。
「……ユリマ。客人に何を頼んだのかね……。……その水晶玉は」
「お父さん……私。お父さんの占いが外れるようになったのは水晶玉がただのガラス玉に入れ替わったからだと思ったの。……そしたらこの人たちに頼んで、洞窟から、水晶玉を取り戻してもらえるって分かった。私ね、夢を見たから……滝の洞窟に、水晶玉があるって。旅の方が、私を助けてくれるって……」
ルイネロさんはユリマさんの話を聞いているんだか、聞いていないんだか分からない顔をして強引にユリマさんを押しのけ、大きな水晶玉を、本当に残念なことに「トウカの手から」ルイネロさんは奪おうとした
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