5話 乱闘
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帷子を着込んでいるんだから装備は身軽じゃないけど。
僕はトウカの攻撃の次にブーメランを投げ、体に命中させた。そして、ザバンが痛みに唸ったその隙にヤンガスが丈夫な木槌を頭に当てた。ゴっと痛そうな音が洞窟に反響する。
そこでザバンはキレる。怒り狂って、奥の手を出してきた。
「ぬぬぅ……これでも食らえい!」
そして怒りに任せて攻撃を仕掛けてくる!そう思って僕は糧を構えた。でも、宛は外れた。
パンッ!
ザバンが鋭く手を打ち鳴らす。その瞬間に地面から涌き上がった禍々しい霧が、僕ら全員に降りかかる。慌てて身をよじって逃げかけたヤンガスは、霧に当たった時から体を震わせているだけになってしまう。
そして、僕の前で剣を構えたトウカは……突如、トウカの目の前に現れた禍々しく大きな紋章が、その霧を取り込むかのように消し去っていくのを半ば呆然として見ていた。
それから僕は。トウカと同じく目の前に守るかのように現れた紋章……、まるで蝙蝠のような、ドラゴンのモチーフのようなそれにびっくりした。見覚えは、多分無い。こんな魔法は覚えていない。トウカは魔力がないんだからなおさらだろう。
全員が一瞬、固まる。その隙は……ザバンは痛みにうめいただけだった。ここで攻撃されていたら、と思うと背筋が凍る。トウカが躱した一撃は鋭く空気を切り裂いていたから。
それからその霧を浴びてから、最初に動いたのはトウカだった。
普段は腰に差している短めの双剣をさっと引き抜いたと思えば同時に鋭く投げつけ、自分をかすめて地面に突き刺さるのをかわすのに必死になったザバンを、凶悪なほど強烈な力を両手にこめて大剣で切り捨てたのだった。
・・・・
水はささやくように伝える。
かの王国、生き残りは二人、姿は人間にあらず。生還した二人、共に人間に有らず。
一人、トロデーンの兵士にして、トロデーンの者でなく。姫の刃なり。身に宿すは力。邪を払う力。魔力。炎。雷。竜の加護なり。彼は人間である。彼は魔物ではない。彼は人間でない。彼は光なり。彼は世を救う勇者なり。
一人、トロデーンの兵士にして、トロデーンの者でなく。王家の盾なり。身に宿すは力。圧倒的なる力。魔力。光。闇の加護なり。流れる血は古く、流れる血は人間にあらず。彼女は人間である。彼女は魔物ではない。彼女は人間でない。彼女は魔なり。彼女は光である。彼女は歪みから出る者なり。
・・・・
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