4話 理不尽
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て反対に言葉が出なかったんだ……。ああ、不甲斐無い。
僕は炎や雷の魔法が将来使えるらしいから、多分そういうのが現れるはずだ。さっきも怒りによって狭くなった視界の端が赤く染まっているような錯覚を感じた。それが限界までいけばあの場は炎に包まれたかもしれないし、何人かが火傷するだけかもしれない。そこは僕の魔力次第だ。そもそも出ない、というのはホイミが使える時点であり得ない。
トウカのお母さんは魔術師で、お父さんは魔剣士で当主様で、……。遺伝は、絶対じゃないけど、どうしてだろうね。だからトウカは手を見つめているの?それとも、力について考えているの?あの場でもっとやってしまえば良かったって?発動しなかった魔法について?化け物だなんて、心にもない阿呆らしい事を言われたことについて?
「なあ……エルト、」
「……何だい?」
その時、ぼそりと呟くように問われたトウカの想定もしていなかった言葉に僕は唖然とした。
「石畳の修理代、私に請求されない?」
「…………うん、トウカってそういう奴だったよ、安心した」
「えっ、されるのっ?」
「僕はそんなこと知らないよ!」
想像よりも僕の親友は逞しく受け止めていた。何を考えてたのかってもう一度問いただしても、あの騒動を起こしたせいで怯えられることよりも修理費ばっかり考えていたみたいだから。
それが本心だったのかは、知らない。結局そのことが話題に登ることはもう無かったのだから。単にいたたまれない雰囲気を察したトウカの優しさだったのかもしれない。でも、その時の僕は安心した。トウカがもうこれ以上悲しむことは嫌だったから。
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