4話 理不尽
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「……」
居たたまれない。
じっと自分の手を見つめて固まっているトウカに、一緒に黙っているヤンガス。多分トウカは必死でこの宿や町を破壊するのを抑えているんだと思う。
トウカは誰が思っているよりも優しいし、困っている人にさっと手を差し伸べたりするけど、その反面、破壊が好きだから。
戦いが好きで、破壊が好きで、魔物に限ってだけど、殺戮に生きていると言っても間違いでもない人間。それがトウカだった。勿論同族には優しいトウカが怖いはずがない。だけど、今日みたいなことがあればトウカはその身に宿す力を開放して攻撃する。
でも、それは普通なんじゃないかな。ただ、行使する力が普通よりも強いだけ。
今は僕たちは陛下の計らいで宿に泊まることの出来たのだけど、さっきからトウカはひたすら、ひたすら暗かった。無言で、無言で、考えこむ。笑顔はないし、トロデーンでの悲しみすら忘れているみたいだった。
トウカは部屋に入ってから、ただ一言だけ、「守れなかった」とだけ言ってから、ベッドに腰掛け、その状態はずっと続いていた。
ヤンガスも、そんなトウカの雰囲気に圧倒されたみたいに話さないし、動けないように見える。僕は、ただただ居たたまれない。
あの場面でトウカが地面を踏み砕いた時、僕はトウカより危険な状態だったんだ。剣を抜きかけ、本気で目の前の人間を傷つけてやろうと思っていたから。だから、本当は僕こそが反省しないといけない。でも、僕は何も責められることをしたとは思っていないんだ……あのやりかけた行動が、兵士として、人として駄目なことだったと分かっておきながら。
……広場で久しぶりに見た、トウカの力。本当はあんなものじゃ済まされないって事を知っているのはここでは僕だけだと思う。それでも本気で怒りに任せて暴れまわったトウカの力まではわからない。でも、町を物理的に破壊することぐらい、わけはないのは知っている。そして、それをやる気が無いことも。
どうやって鍛えたらあんな風になるのかは分からないけど、振るわれるのは完全に「力」だけっていう不思議。その中に魔力は無いし、そもそもトウカは一切魔法が使えない。それがトウカだ。
魔力が全くない人は珍しい。だけどそれだけだ。いるよ、僕の知り合いにも。あってもわずかで、無いに等しくて、それ故に魔法が使えない人はもっといる。だけど、うん。潜在的な力には魔法的なものをみんな持っているらしくて、あんな風に強大な力を使うときには無意識に何かしらの魔法が発動するもの、らしい。
だからあの状況で超常的なことがなかったトウカには本当に魔法が使えない。だから、あの時トウカは人間ですら無いとまで言われたんだ。そのことに関しては、僕も悔しい。全力で否定してやりたかったけど、僕は怒り狂っ
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