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剣士さんとドラクエ[
4話 理不尽
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無骨な石を、無二の陛下に石を投げたその者を見つけ、私は怒りにまかせて足を踏み出した。その時、踏み出した下の石畳は簡単に割れ、木端微塵に砕けた。それは、私としては少し強く踏み込んだだけに過ぎない。怒りは力を何倍にも増幅するというけど、そもそも私は普段の生活ではふわりと羽のように舞っているだけにすぎないのだから、当然。その上怒りも加われば……しかし私はまだ全力なんて出してはいない。

 我ながら化け物じみた力を、ほんの少し見せただけで群れる屑共からに悲鳴があがる。なんて耳障りな。

 口々に私を魔物が化けた者だと言う。聖水すら、かけられた。勿論、効くはずがない。私は魔物ではない。私はモノトリアの貴き血をたまたまといえど引いているのだから。

 ああ、でも。少し脅したぐらいでは埒が明かない。ここは一発で黙らせてやろう。

「……我が名は、」

 義父上、義母上。どうかお許しを。私は大嫌いな権力を振りかざします。そして、この屑共から陛下と姫様を救い出さなければ。

「……止めい!」
「……!」

 義父上と義母上に心の中で贖罪しながら続けようとした言葉を当の陛下に止められる。これは私が、私だけの力で止めなければならないという、ことだろう。

 家の権力を振りかざせるほど私は偉い人間でもないし、当主でもないのに思い上がるなという訳だ。さすがは陛下だ。なんと正しい判断か。矮小な私には思い当たらないような考えをお持ちだ。怒り狂ってもなお、貴族は理性的に自分の力を図らなければいけないのだ。

「…………」

 そこで、まだこの場に残っている最高に恥知らずな人間を追い払う為、私は「強めに」足を踏み出した。私の「強め」だ。間違っても、一般生活レベルの「強め」ではない。

 するとさっきとは比べものにならない程、石畳は何メートルも砕け散る。その中心にいる私はさしずめ爆心地の中心人物だろうか。クレーターでも出来たようだ。これでも本気ではない。屑に本気をだすほど私は成り下がってはいない。

 それを見た恥知らずは蜘蛛の子を散らすかのように逃げ去った。誰一人怪我をさせては居ないからまあ、大丈夫だろう。これでいい。これでいいんだ。

 私は、化け物じゃないよね?

「……トウカや」
「行きましょう、陛下。マスター・ライラスは数日前に亡くなられていましたし、ここに長居は無用です」
「……そうじゃな」

 私は最初から表情を変えていない。もう、怒りすら馬鹿らしくなってしまった。こんな私を見て、エルトは怖がったりしないだろうか。地球の常識を思い返してみれば、こんな行動は人間の域を超えているんだから……。魔法がある世界でも、「バイキルト」も使わずにこんなことをする奴は異端だ、きっと……。

・・・・
・・・
・・


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