4話 理不尽
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らない人には謎の関係、かな……。そんなこと言ったら僕もだって?……そうだね。
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どうして、人間はこうも醜いの?
私が生きていたあの世界の人間も、決してお綺麗な人間ばかりではなかったし、こんな出来事は歴史上、何度も何度もあったんだろうけど……。
でも、私は何にも知らずにあの世界で生きて、若いまま死んだんだ。生まれた国は日本、差別にあったことは特になかった。その後はここで生まれて、小さな小さなトロデーンの箱庭の中で生きた。義父上や義母上が目隠ししてくれていた世界しか見てなかった。見えなかった。トロデーンの中の汚いものすら、見ていなかったんだ。
要するにさ、こういう差別や汚い物は見なかった。決して見せられなかった。完璧なまでに隠されたんだ。
私は貴族だったから。大貴族の子という立場だったから。知るのは大人になってからだった。そんな中、成人……大人になってすぐ、私は旅に出た。出ざるをえなかった。だから、知っていることは子供時代と一緒だった。
そうだ、エルトと私は紙一重だったんだ。もし、屋敷の前に捨てられていた私を義母上が見つけなかったら?ここに来た時、八歳ぐらいだったエルトを、そうさ、義母上が見つけたのがエルトだったら?エルトが、どこかで分岐したであろうモノトリアの血を引いていたら?どうなっていたの?八年、たった八年のズレと偶然の産物。
当時のエルトは小間使い、私は貴族。
それでも共通点は、ある。置かれる立場は違っても、姫様の友達だったエルトと、貴族の私は汚いものを見えないように目隠しされていたこととかね。
でも、紙一重って言ったよね?エルトは私と違って世界がここまで汚いことを知っていた。知らざるを得なかった。私は全く知らなかった。知る機会もなかったし、知ろうとする意欲もなかった。慢心はいけない、と知っておきながら……私は見せられる世界だけが全てだと思っていたんだ。
エルトは私よりも冷静にこの場を打開する方法を考えていた。私のようにすぐに力ずくで解決しようとはしなかったのだから。汚い世界を知っていたから、私のように動揺しなかったから。でも、これは後から知ること。
「止めろ、止めろ!」
思考を止め、ただただ無我夢中で、陛下や姫様に群がっている人をなぎ倒す。力ずくでかき分ける。邪魔な奴は突き飛ばす、蹴り飛ばす。叫び止める声は聞こえている。でも止める気は、無い!
ずっとずっと鍛えに鍛えたこの力は、一般人を吹き飛ばすことは容易かった。それはまるで綿でも投げるかのよう。軽い。多分殺してしまうことも同じぐらい軽いんだ。でも、主君に血を見せるわけにはいかない。陛下は汚い世界を知っておられるだろうけど、不快にさせてしまってはいけない。
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