3話 虚喜
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の両親、トウカは僕よりもショックを受けて当然だった。両親だけでも辛いだろうに、赤ん坊のときから世話をしてもらったという使用人たちの変わり果てた姿や、どんな屋敷よりも美しく、思い出のあるトウカの生家の荒れ果てようは酷かった。
らしく無く、それを見た彼は呆然としていた。それでもトウカは涙をこぼさなかったけれど……。
僕はトウカの痛ましい姿を見ていたけれど、とうとう冷静さを失って、座りこんでしまったトウカと逆に冷静だった。トウカとの思い出の写真……という絵みたいなものを荷物に入れる余裕ぐらいはむしろ出来ていたから。姫様に頂いた想い出のバンダナを頭に巻いたりということも出来た。
でもトウカは繰り返すけど泣かなかった。一応、僕も、泣かなかった。もう大人だから、兵士だから、というよりは泣いている場合ではなかった、というのが正しいかもしれないけど……。
この大剣は師匠から貰ったんだ。この双剣は母上からの贈り物でね。
座り込んで呆然としていたはずのトウカはすぐに立ち直った「ふり」して大剣やら双剣やらを身に着けた。服も、どこから出したのかいつものような豪奢なものでなく、普通の単に丈夫なだけの服を鎖帷子の上から着たりして。
「おぉ、あれがトラペッタ!」
「そうでがすね」
傍目にはただただ生き生きと笑うトウカと、それに相対的な血濡れの剣。
あぁ、早くドルマゲスを倒さないと。城を元に戻さないと、家族を返してあげないと。そう、思うんだ。この友人が壊れてしまう前に。心でただひたすらに泣き続けて、助けを呼ばずに震える友人が。
・・・・
「やぁ、そこのお姉さん。ボクは旅人なんだけど、この街について教えてくれないかい?」
「トウカ……」
「トウカの兄貴……」
まるでナンパをするかのように街の娘さんに話しかけているトウカに、ヤンガスと二人して白い目で見た後、そのトウカによって思いの外情報が簡単に増えていくことに頭が痛くなる。薔薇の花でも持ったら似合いそうだねって、そうじゃなくて。白い薔薇でもいいねってそうじゃない!
……トウカって何が出来ないの?魔法以外で教えてよ。
きらっきらと洗練された、傍目にはわからない完璧な作り笑いを浮かべるトウカ。前髪によって左半分しか顔が見えていない癖に、浮かべる表情によって漂うイケメン的雰囲気を、やたらめったらと撒き散らすトウカからさっと目を逸らす。僕の精神衛生上悪い。トウカはそんなに軽いやつじゃないとは分かっているけど、少し、ぐさっとくる。端的に言えば気持ち悪い。ギャップがね……。
いや、別にトウカは顔が悪くはない。酷いようだけど言い訳すると飛び抜けて良くもない。トウカの家の使用人の女の人曰わくは女の子のように可愛い顔らしい。そこはどうでもいい。ど
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