3話 虚喜
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して下さった。迷うこと無く、手を伸ばしてくれた方だ。命を狙った俺を助けてくれるほどに慈悲深い。
トウカの兄貴は力も剣もとてつもなく強いお方だ。もちろん優しいお方だ。エルトの兄貴の力添えをして下さっただけで分かったのだが、俺は到底勝てる気はしないほどの力持ちだ。ひょいとトウカの兄貴が俺がすがる縄を引っ張っただけでエルトの兄貴もろとも俺は安全な地面に吹き飛んだからだ。軽く五メートルは。
それから、お二方は兵士らしい。トロデーンの大国の、それも近衛らしい。俺にはよくその階級は分からないが、そこらの雑兵ではなく、偉いのは分かった。
そして、へんてこだが憐れでもある王や姫の呪いを解くべく旅をしていらっしゃる共に慈悲溢れる方なのだ。
それから、トウカの兄貴は高貴な貴族出身で、身分に驕らず能力で近衛になられた。そうエルトの兄貴が仰っていた。トウカの兄貴はその言葉に謙遜をなさってもいた。
きっと俺の立場ならこれ幸いとどこかの国へ行って何事もなかったかのように新しい生活を始めるというのに、お二方ともなんと優しいんだろうか。忠誠心を素晴らしいと感じるのは初めてだった。
「プークプックの活け作り、どうぞっ!」
「果てしなくグロいから今すぐ止めなよ、トウカ……」
「はっ、姫様、陛下、失礼しましたっ!」
ただ、どうしてか。
尊敬する二人の姿を見ると、時々微笑ましくあったり、優しい気持ちにもなれた。小さな子供を見るような、そんな。
どこまでも着いて行くでがす。
その言葉に嘘はない。
・・・・
「スライムのスライスにプークプックの活け作り、くしざしツインズのサラダにガチャコッコの盛り合わせ、スライムはミンチ……滅多切りにもしてみた」
「少しは自重しようか…………」
「次はエルトにも料理させてあげるさ」
「違う、そこの話じゃない」
目的地のトラペッタへ向かう最中、ふざけにふざけながらも誰よりも早く敵を殲滅し、言うまでもなく誰よりも強いトウカに文句はあまり言いにくい。
僕には分かっている。トウカはこんなノリでも一応自重はしてるし、煌めく左目を、鋭い目つきを見れば戦いにいつでも本気なのも分かる。料理と称しているけれど、そう言っているだけで殆どは滅多切りして原型を留めていないだけだから。だけどそうやって悲しみを無理やり誤魔化すかのように明るく振る舞わないで欲しくもあるんだ。
……僕が言えたものでもないか。守るべき姫様に励まされるほど、僕だって無理やり誤魔化して明るくあろうとしている。トウカと違って姫様に分かってしまうほど下手だし……トウカが見事なのは、僕ほど付き合いが長くないとわからない所だ。
トウカと僕があの日見たのは、呪いに落ちたトロデーンで変わり果てたトウカ
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