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剣士さんとドラクエ[
3話 虚喜
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・・・・

 僕の後ろであくびをしていたはずのトウカは急に白い閃光に見えるほど素早く飛び出す。はためく服の裾が僕の頬をかすめかけるほど高く跳躍して。

「スライムのスライス三丁っ!」
「……よくやるよ…………」

 トウカが飛び出した直後、魔物が現れたと僕は認識する。つまりは僕が視覚で認識するよりもトウカが気配で察知する方が早いという訳だ。

 構えようと瞬間的に剣を抜くけど、それよりも数段トウカは早かった。彼は彼の身長「は」ある大剣を横薙ぎ一閃し、目映い銀の閃光を撒き散らして煌めかせ、それに目を奪われた僕が我に返った時にはもう、地面に水色の物体がうにょうにょと蠢いているだけになっていた。しかも宣言通り良く見ればスライスだ。横薙ぎは一閃どころじゃなかったらしい。

 何が「よくやるよ」だって、そんなでっかい大剣を安々と振り回せることとか目視すら難しいほどの素早さとか。空中で斬っておきながら正確に剣を当てることとか、その他いろいろさ……。

「流石はトウカの兄貴!目にも止まらないでがす!」
「あはは!きっとヤンガスは斧で出来るようになるさ、すぐにでも!」
「…………頭が痛い」

 トウカと他の人を一緒にしてはいけないと思うけど……まぁ、練習すればいつかは出来るかもしれないけど……!そんなに白い歯を見せてどや顔をしなくていいから。陛下に呆れられているよ……。

「エルト、トウカ・モノトリアは何時もああなのかの?今年の謁見とは余りにも違い過ぎるのじゃが」
「……普段や職務は非常に真面目ですが……たまにトウカもふざけますよ、今みたいに城下町から出ますと」
「成る程……そういえば箱入り息子じゃったな…………」

 無邪気に笑いながらとヤンガスとスライスされた無残なスライムの残骸をそこらで拾ったであろう棒切れで突っついているトウカは暫く放っておく。小さな子供が泥遊びをしている光景と重なったけど気のせいということにして。

 今は困ったように佇まれる姫様のお相手をするのが先決だからね。

 それから、必死で顔を笑顔に保とうとして、道化になって、現実から目を逸らすトウカを見ていたくなかったから……。僕の辛さは、鏡のようにトウカの辛さだった。今も胸の奥がショックの余韻でじんじんとして、気を抜けば涙が流れそうだった。僕もあんな風に笑っていたほうが、忘れられるような気がして、姫様に笑いかけた。

 姫様は、そんな僕の心を見透かしたように、微かにいなないて下さり、そのままそっと僕の腕に寄り添われた。


・・・・

 俺には、尊敬する兄貴が二人もいる。

 エルトの兄貴とトウカの兄貴だ。

 エルトの兄貴はとても優しく、俺みたいなどうしようもない奴を助けてくれた命の恩人だ。真っ先に俺と地上を繋ぐ縄に手を伸ば
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