2話 錯乱
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に生まれた時からあったもの。気付いた時からあり、見た目は酷く醜く、誰もが目を背けるもの。別に普段は痛くないし、声帯にも問題ない。だけど周りの人をわざわざ不愉快にさせることもないので隠しているのだ。
そして私は正真正銘女であるので十八でも当たり前だが声変わりをしていない。一応私は男装している上、声変わりをしていない青年という不自然さを無くす為に声を変えるチョーカー型の魔道具を付けている。それがなくては声で簡単に女だとばれてしまう。
私の声は残念なことにひどく高く、いまだに大人らしく無く、少女めいている……と義母上に言われた。自分ではよくわからないが、子供っぽい少女の声では駄目だろう、それは。
しまった、さっきエルトにその問題の声でうっかり話してしまったかも知れない。
と、そこまで考えて、首を抑えながら起きあがると、心配そうな顔をしたエルトが倒れた体勢から起き上がってこっちを見ていた。
「トウカ、大丈夫?さっきはすごい衝撃だったね。……って、その首はどうしたの?怪我したのっ?」
「…………」
抑えるのは間に合ったのか、傷跡は見ていないらしいエルトは抑える仕草に反応しただけのようだ。ならいいか。さっさと予備のチョーカーを巻けばいい。傷跡の方は見られたっていいのだけど、あんまり気分が良いものなわけがない。
質問に答えずにポケットから出した魔道具を巻き、エルトに向き直った。
「あー、あー、声変じゃない?」
「…………、もしかしてなかったら喋れなかったり?」
「……そうでもないけど喋りたくはない」
まぁ、そういう反応になってもおかしくはないけど、事実から見れば妙な誤解をされかけた。返答に嘘は、ないはず。嘘をつくことは、何度吐いても慣れない。
それにしても……さっきの衝撃は何事だったんだ?
・・・・
「…………!」
「は、は、うえ…………」
何があったのか分からないので、二人して城を回っていると、見知ったトウカの母君が廊下の向こうに佇んでいた。こんな夜に何か用かと思い、急いで近寄ってみると、彼女は立ったまま、人の形をした茨になっていた。驚愕の表情を浮かべたまま。美しい顔も、祈るように組まれた手も全部全部緑がかった色と刺に変わっていた。
さっきまで走ってきた城の中も、見たこともないほど大きく邪悪な茨が巻き付いていたり、廊下に穴を開けていたりしていたが、まさか、人までなんて……。
一瞬、呆然としたトウカはすぐに動かぬ彼女の頬に手を伸ばした。他の部位とは違って棘がない頬は温かかったらしく、トウカはほっと息を吐いた。生きているならば手立てはあるから。変わり果てた母を見ても、トウカはすぐに冷静になった。少なくともそう見えた。小さい時のように激高したり、感情を揺ら
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