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剣士さんとドラクエ[
2話 錯乱
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右の前髪は顎ぐらいまで伸ばしているけど。まあ、そんなので男女の区別が付くはずがない。

 ちなみに……まだ単なる近衛兵なのは私の誕生日……ということにしている拾われた日……が昨日だったから。そんなにすぐには当主になったりしない。伝統的に当主の誕生日に継ぐことになっているから。それは三ヶ月後だ。

 そんなことよりも、私の目標は姫様専属の近衛兵になることだ。まだ、達成できない。だけどこのままいけば、エルトがそれになるだろう。能力も高いし、その上に姫様とエルトは幼なじみだから。同い年なのに残念ながら姫様と私の交流は殆どないし。姫様と同性であることは姫様はおろか、陛下も知らないんだし、それが考慮されることはない。

 孤児で身寄りがなかったエルトがうんと偉くなって、仲のいい姫様の近衛兵になったらどれだけ幸せだろう。私はそれを見守って、玉座の番にでもなれればいいと思っている。だけど、姫様の専属近衛兵になるというこの目標は私だけのものではない。モノトリア家の物だ。

 ああ、どうしよう。これでは義父上と義母上の期待に背いてしまう。でも、エルトを蹴落としてしまうのは絶対に嫌だ。それ以前に姫様の希望は私でなく、間違いなくエルトなのだ。姫様にとってエルトは唯一無二の同年代の友達で恐らくは初恋の相手、しかもそれは両想いだ。
 
 これで姫様と特に関わりのない、一応同年代だけども異性だと思われている私がいくら実力で勝ったって選ばれるはずはないんだ。精々これこそ玉座の間の番が精一杯。……これなら近衛兵隊長でも目指したほうがいいかもしれない。しかも、あの二人の仲のことを陛下は好ましく思っていられるし……。結婚させるおつもりはサザンビークの件もあるし、無いだろうけど……優しく見守られていられるし……。

 隣にいるエルトのかすかな呼吸音をBGMに悶々とひたすらに考える。


 そして、そんな何時ものトロデーンが一瞬にして変貌してしまう瞬間が来てしまう。

 私達の運命を変えた……強い衝撃。
 
 目から火花が飛び散ったような、激しい衝撃とこみ上げる痛み。何かを強く強く拒絶するような感覚。首に装着している声を低くする魔具が弾け飛ぶのを感じる。その下に隠されている首の、いつついたのかも分からぬ古傷が強烈に痛む。それから、役立たずで見えないはずの右目が刺すように痛む。

「エルトッ!」

 意識が遠のき、暗くなっていく視界。構わず私は意識を失いかけて崩れ落ちるエルトに手を伸ばす。エルトはすがるように私の手を取って……。

 一言、トウカ、と言い返し……。

 私の視界はあっけなく暗転した。




 ふと首もとに慣れない風を受ける涼しさを感じ、とっさに首を抑えた。

 これはあの忌まわしい事件の名残……ではなく、この世界
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