1話 「彼」
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の聞いたらむしろトウカが兵士とか傭兵を雇うんじゃないかって突っ込みたくなるんだけど、トウカの家は特殊なんだ。多分、知らない人はいないと思うけど。
モノトリア家は代々トロデーン王家を守り抜く騎士のような存在で、トウカの父君は現トロデーン陛下を、トウカは姫様……ミーティア姫を護るとされている。トウカの母君は城まるごとを結界で守護している魔術師。
そして護る地位すらも自分で獲得しにいくんだ。例外は女性で、普通は結婚を優先するんだけど……今代は一人しか子供がいないから、関係なく騎士になるそうだ。でもトウカの母君の様子を見ていたら結局王家を守りに行くんだとは思うけど。性別も大丈夫だから気にすんなとも言っていた。最初から気にしてないよ、トウカ。君は男じゃないか。 誰よりも勇ましいし……。
「おっ、エルトの坊主じゃねぇか」
いきなり後ろから声をかけられて振り向くと、そこにいたのは城の入口を守る門番の人。何度か話したことがある顔見知りの人だ。髭の似合う大柄な兵士。宿舎に居たのは休憩中なのか、これから入隊式だから?
「あんなに小さかったお前さんが兵士になるとはなぁ。俺も年をとったもんだ」
「お久しぶりです」
そう彼は過去を懐かしむように目を細める。それをどこかぼんやり眺めているトウカが、視界の端でつまらなそうな顔をしていた。どっちかというとトウカは兵士を遠巻きに眺め、命令する立場だから個人的な知り合いが少ないって前にこぼしていたのを思い出した。
その時に遠巻きって、真ん中で守られる側ってことだよね?って聞いたら、逆だと言われた。兵士が魔物退治で戦う最前戦よりも前で父君と二人突撃しまくっているらしい……モノトリアってなんなの。間引きって大事だよって……貴族だよね?あの、威張って兵士を顎で使っている側の……?
「こっちはお前さんの友達かい?同期のようだが」
「……初めまして」
無感動な声で挨拶したトウカはさっと僕の背後に隠れてしまった。トウカって人見知りじゃなかった……よね?何やってんだか。身長的にすっぽり隠れるねって、そうじゃない。
「ははは、こっちの坊主は人見知りだな、これからよろしく頼む!俺はバートランド・ヘッスだ。お前さんの名前はなんて言うんだ?」
あ……もしかして。目立たないようにしてたんだな、トウカ。本人にその気がなくても大きすぎるネームバリューが邪魔するからなぁ。
例えば真剣勝負でも影で八百長を疑われたり、八百長を疑え無いほど圧倒的に勝っても妬まれたり。そんな風な腫れ物扱いはトウカ、大っ嫌いだから。でも、先に名乗られてから名乗れと言われたらトウカは同時に名乗らないことは絶対にない律儀な人間。ああ……これは。
「ボクは……トウカです」
「…………モノトリア様とは」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ