暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン46 鉄砲水と毒蛇の神域
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『……どこへ行く気だ、マスター?』

 チャクチャルさんの声が、僕の頭に響く。随分と剣呑な調子だけど、それも無理はない。つい先ほど謎の悪夢を見て飛び起きたせいで、時刻はいまだ午前3時を半分回ったところ……当然、太陽なんぞ欠片すら昇っていない。そんな時間にこっそりと、音をたてないようにいつもの学生服に着替えている僕を見咎めたうえでの発言だ。

「(ちょっとね……わかったわかった、外出たら話すよ。ここで声出したら十代が起きちゃう)」

 適当にはぐらかそうとしたら口にこそ出さないもののものすごい不快感が伝わってきたので、慌てて一言追加する。到底納得したようではなかったけれど、少なくともこの場で隣の部屋の十代をたたき起こすような真似はしないだろう。ここで待ってくれるあたり、邪神と呼ばれる割には律儀な神様だ。

「じゃ、行ってきまーす」

 部屋を出る前に一度振り返り、誰もいない室内に向かって声をかける。無意味と言われればその通りだけど、こういうのは気分の問題だ。寮を出てしばらく歩いたところで、再び頭の中にチャクチャルさんの声が聞こえてくる。

『それで?』
「それで、って何が?」
『予想はついているが、一応聞かせてもらおう。どこに行き、何をする気だ?』

 いつもよりやや低めの声のトーンからは、中途半端なはぐらかしやごまかしは一切聞く耳を持たないぞ、という無言の気迫を感じる。さらにテレパシーで話しかけてくるばかりで一切僕の前にその姿を現さないことで、余計にその迫力が増して聞こえる。無論、そうなることを計算づくの上での行動だろう。こういうちょっとしたテクニックだけで自分の威圧感を増幅させ、話を自分の優位に持っていく……本当に、駆け引きのうまい神様だこった。
 とはいえ僕としてもここですっとぼける気はない、それに隠したところですぐにわかることだし。さて、どこからどう話そうか。ゆっくりと歩きながら、慎重に言葉を選ぶ。

「僕ね、さっき、夢を見たんだ」
『夢?』
「そ。心底つまんない夢だったけど、どうしても気になるんだ」

 先ほど僕が飛び起きた夢……いつの間にかコブラがデュエルにより十代に倒されたとかいう昨日からの過程を全部すっ飛ばした時間軸で、わけがわからないまま十代と僕がデュエルをする夢。(ネオスペーシアン)の進化体だとかコンタクト融合じゃないネオスの融合体だとか、なんだか色々とよくわからないモンスターばかり出てきた……そして、恐ろしい夢だった。無理に明るく表現するならば、まるで打ち切り漫画の投げっぱなしバッドエンドな最終回のような。それぐらいひどい内容の、だけど妙なリアリティーのある夢だった。
 このあたりで何かリアクションしてくるかと思ったけど、チャクチャルさんからの反応はない。最後まで口を挟むつもりはない、と
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