第十六話:崩れ落ち行く鉄城で
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まれた剣技は古の大英雄の絶技。人の身では決して達し得ない武の境地。人体の九つの急所を斬り抉る神速の連斬。
「是、射殺す百頭」
「ッ!?」
両手から駆け巡る痺れと衝撃に、魔王は呼吸すら封じられた。顕現していた大盾も今の九連撃によって足場と共に崩れ去った。
「それでもッ……!!」
それでも、彼の意思は折れてなどいない。まだ戦えると吼えつづけている。
その揺るがぬ意思に応えるように、神王の大盾は再び勇者と魔王の前に現れる。
「集え極光よ!!」
勇者の持つ濃紺の剣に、世界を染め上げる極光が集った。そこから繰り出されるのは言うまでもない。これまで強力なボスすらも組み伏せてきた至高の一撃だ。
その威力たるや、創造主たる魔王の想定をも上回るに違いない。それ程の決意、意思の力がその剣には宿っている。
だが、それに臆したかと問われれば、魔王は即座に『否』と返すだろう。臆してなどいない、寧ろ歓喜に打ち震えているのだと。
幼い頃からの憧れが、今目の前にいるのだから。
「エクスカリバァァァアアアッ!!」
だからこそ、今この瞬間。
魔王?????茅場晶彦の魂は至上の輝きを放つ。それは全てを超越する尋常ならざる意思の力。心意の業。
自由落下する上空から、聖剣の一撃が振り下ろされる。
この世界ごと染め上げてしまうような絶大な力の波動。それを前に、神王の大盾は輝きを強めた。
「イージスよ!」
大盾が、その名を呼ばれ脈動する。既にひび割れた半壊状態の神の盾だが、使い手の意思の力が、盾を通して全てを防ぐという決意を固めた。
「うおおおおおッ」
「ぬぅおおああああッ」
極光剣と神の盾が交わった。両者の腕に異常な負荷がかかり、鋭い痛みが駆け抜ける。
それでも、彼らの意思の前でその程度は些細な事。そんなことよりも、少しでも、一歩でも目の前の宿敵の意思を超えんと全霊の力を込める。
決着は、早くに訪れた。
「ぐ、ぅ……ぉぉぉあああ!」
「ぬぐぅ……アアア!」
盾が砕け散る。
光が消え、剣が弾かれる。
世界が、静寂に包まれた。
† †
ああ、なんと、幸福な時間だったのだろう。
積年の夢、かつて憧れた英雄との命の奪い合い。何を得ても満たされなかった私は、今、何もかもを失ったいうのに、とても満ち足りた気分だった。
身体は自然落下している。この天空に果てはない。あるとするなら、この時空すらカーディナルによって終わらせられた時だろう。そして、残念ながらその時は近い。
だが、ああ。彼が引導を下すというのなら、納得しよう。
私
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