第十六話:崩れ落ち行く鉄城で
[8/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
先は茅場の胸に向けられていた。
自らが作り上げたシステムに縛られた身体が軋みを上げる。
目の前の少年は、これを打ち破り彼の思惑すらも砕いてみせた。ならば、この世界の理たる魔王に不可能なはずがない。
意志はシステムを超越する。
「っ!?」
必勝を確信した刺突は、紙一重のところで純白の剣にその軌道をずらされた。
両者の視線が交わる。最早互いの瞳には、身を焦がす程の私怨も、幼少より抱き続けてきた存在への憧憬もなかった。
「柳剣流?????!!」
「盾よ…!」
あるのはただ、目の前の敵を超えんとする揺るぎない意志のみ。
その思いに呼応して、濃紺の剣に眩い碧光が、鮮血の盾に迸る紅光が宿る。
「瀧 f ッ!」
「神 王 咆 !」
絶大な力の衝突。空間が軋みを上げ、宮殿に亀裂が走る。
それでも両者は、魂の叫ぶままに己の得物を振り抜いた。
「ぐっ」
「むっ」
?????地が裂ける。
下層から徐々に侵食してきた崩壊の波はついに最上層たる紅玉宮にも及び、二人の立つ地面は砕けた。
「だが、まだ?????」
「終わってねえ!!」
それでもこの二人にとっては、世界の崩壊など最早些細なことである。
足場がないなら作ればいい。自然落下していく瓦礫を踏みしめて、両者は再度剣を振り上げる。
「剣達よ!」
「神の盾よ」
その背後には無数の剣軍。
その眼前には絶対守護の盾軍。
幾つもの剣と盾が、蒼穹を覆い尽くした。
『殲滅しろ』
両者の声が重なる。恐ろしい程の剣が射出され、その全てを浮遊する盾が迎撃する。
その光景は凄絶で。砕け散る剣と盾の残光を切り裂いて、両者は再び激突した。
だが勇者の手に罪の名を冠する濃紺の剣はなく、その両の手には一振りの長刀が握られていた。
「全工程投影完了」
その長大な刀の銘は『物干し竿』。かの剣豪、佐々木小次郎が振るっていたとされる一振り。
それに刻まれた剣技は時空を超える三閃。三つの斬撃を同時に重ねる剣技の極み。
「燕返しッ?????!」
刹那三閃。重なった斬撃が、巨大化した鮮血の盾に亀裂を入れた。
「ぬぅ…ッ!」
「まだだ……!」
意識が漂白される程の痛みを噛み殺し、物干し竿を投げ捨てた勇者は、左手に無骨な斧剣を掴み取った。
「全工程投影完了」
斬ることなど到底不可能であろう荒削りの斧剣。圧倒的な力と物量で押し潰すことにのみに特化した鈍器にも等しい剣を、左手一本で頭上に振り上げ、右手を左腕に添える。
この斧剣に銘はない。
それでも刻
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ