第十六話:崩れ落ち行く鉄城で
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てを使い尽くし、そして打ち勝つ。どんなにギリギリの勝利でも構わない。それが、勇者の内に深く刻まれた『教え』だ。だから、ゲーム初心者にも関わらずここまで生き残ってきた。
「ムンッ…!」
だが、魔王とてそれ位のことで動揺するタマではない。吹き飛んでくる盾を器用にも掴み取り、逆に一歩踏み込む。
そして繰り出される朱色の斬撃。大抵のソードスキルを網羅している勇者ですら知らない、ユニークスキル『神聖剣』の一撃。
?????柳剣流
「『瀧f』」
知らない?それが一体なんだと言うのだ。
この世界の二年間と、更に現実世界で費やした四年。その年月に鍛え上げられた彼と彼の剣に、その程度は些事に過ぎない。
青い燐光を散らし、濃紺の剣が朱色の斬撃を撃ち返す。
本来ならば、カタナスキルの基本に過ぎないソードスキル。故にこれは、彼の修めた剣術とこのソードスキルの型が奇跡的に一致したからこその威力だった。
「?????やはり」
その自らの剣技を撃ち返して余り有る威力に、魔王は小さく呟く。彼の中で、一つの懸念が確信に至った。
「君の繰り出すソードスキルは、美しい」
茅場が今まで見てきた全てのプレイヤーは、ソードスキル発動の際に自身の体をシステムに任せていた。あのキリトですら、多少踏み込みのアシストをするだけでシステムに規定された型を逸脱するに至っていなかった。まあ、それは仕方のないことだったのかもしれない。システムから逸脱し過ぎれば、ソードスキルは発動しなくなるのだから。
だが、目の前に立つ男は違った。
この世界を創り出したのはゲームプログラマーである茅場晶彦だ。当たり前のことだが、彼の専門はプログラミングであり『剣』ではない。
勿論、剣に対する憧れから様々な文献を読み漁り、研究し、そして数多あるソードスキルを開発した。
だが、彼は一度だってその剣技を現実で試したことはなかったのだ。
故にこの世界の剣技は理屈ばかりの型。あらゆる文献に載っている知識を固めて形にしただけの、窮屈で、茅場自身が言うには『簡素で美しくない』技だった。
だが彼は。彼の剣は美しかった。
現実世界で剣術を学んでいた彼の剣は、伸びやかで『自然』だ。まるであの一閃の次に来るのが刺突であることが当たり前であるかのような錯覚を覚えさせる程に。
システムに身を任せるのではなく、あくまでシステムはアシスト。動きの主体は自身の身体であるとする彼の剣に、茅場は憧れすら抱いた。
「茅場ァァッ!」
憎しみも、恨みも、全てを抑え込んでレンは吼えた。これで終わらせる。全ての因縁を、この一撃で!
「まだだ。まだ、終わらせん……!」
抱いた幻想の通り、エスピアツィオーネの切っ
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