第十六話:崩れ落ち行く鉄城で
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ゃない。
オレの戦いはまだ、何も終わっちゃいない。
「そうなんだろ、ネロ?」
傍らに立つ彼女へ問い掛ける。当然のことだが返事はない。だが、それで構わない。死んだ後も態々オレに喝を入れに来たのだ。オレの知っているネロならば、この問いの答えなど決まっている。
いつの間にか真紅の扉は目の前にあった。とてつもなく重厚な扉だ。これまでのどのボス部屋の扉と比較にならない程に、ただ只管に重い。
だが気圧されることはない。
死者にまで心配されて、今更ウジウジなんかしていられるか。
「さあ、終わらせよう」
見送る視線に左手を上げて、オレはその扉を開いた。
† †
深紅に彩られた宮殿。開いた扉のその先に、血色の玉座に座す白き王がいた。
挑戦者の少年が右手を振る。現れたウィンドウを操作すると、その装いは青い燐光を放ちながら変化した。
純白の外套は漆黒に染まり、背中の剣は濃紺の色合いを纏う。
対する王は何もせず。ただ黙し、微笑みを浮かべるだけであった。
「一つ、ハッキリさせておこう」
勇者が舞台に立つ前に、魔王は唐突に口を開いた。
勇者は足を止め、玉座に座す王を無言で見やる。
「私はずっと疑問に思っていたのだよ。何故、ネロ君が私の正体に辿り着いたのかを」
勇者は眉を潜める。
そう、彼が魔王の正体を悟ったのはネロという少女から死に際に伝えられたからだ。その直後、彼は魔王に勝負を挑み、一度敗北をすることになる。
では何故、なにも手掛かりなどない状況から、彼女は魔王の正体を看破したのだろうか。
「その疑問を明らかにする為には、彼女の現実世界での素性を知らなければならない。なに、マナーなど気にする必要はないよ。むしろ彼女は、君に知ってもらいたいはずだ」
徐に、魔王は玉座から立ち上がる。そして、その顔に少しの哀しみを滲ませて、口を開いた。
「彼女の名前は『茅場茜音』。私の歳の離れた妹であり、私と同等の技術を持つエンジニアだ」
勇者の顔が驚愕に染まる。
無理もないだろう。この世界で最も信頼していた少女が、この世界の創造者たる魔王の妹だったのだから。
だが、それで合点がいった。
彼女の他プレイヤーとは一線を画す『攻略』と『無死者』への拘り。彼女は、自身の兄の野望を止めたかったに違いない。だからこそ、自分の命を懸けてまでこの世界にやって来た。その有り余る情熱が、最終的に彼女の道を踏み外す遠因となった。
しかし逆に、疑問も出てくる。
ネロと魔王は幾度となく顔を合わせているはずだ。ならば何故、今この瞬間まで彼は自分の妹に気づかなかったのか。
「いやなに、簡単な話だよ。私はこの世界を創り上
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