第十六話:崩れ落ち行く鉄城で
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あり得ない。オレは、確かにこの手で彼女を貫いた。その感覚を、今でも覚えている。間違いなく彼女は死んだのだ。死んでいなければおかしい。
けれど。
思考とは裏腹に、オレの脚は一歩踏み出していた。踏み出す度に全身に痛みが走る。意識にノイズが走る。
それでも、歩みは止めない。殺してしまったはずの彼女の下へ、ただがむしゃらに足を前に出す。
「……っ、待ってくれ…!」
赤い衣裳の少女はゆっくりと階段を昇り始めた。
まるで、こちらを導くかのように彼女は先を往く。オレは、この意識が途切れないように歯を食いしばりながらついて行くことしかできない。
「……これは」
長かった螺旋階段も終わりを迎え、広い空間に足を持ち上げたオレを待っていたのは、見慣れた青い光の柱だった。
転移門の光。どこに繋がっているのかは分からないが、確かにその光はオレの目の前にあった。
そしてネロと目が合い、彼女が微笑む。オレが口を開きかけた刹那、彼女は踵を返し転移門の光へ飛び込んだ。
「っ、くそ……」
もしこの転移門がどこにも繋がっておらず、この電子の大海原に投げ出されるとしたなら。もしかしたら彼女は、オレを迎えに来たのかもしれない。
そうだ、そうだよな。オレだけが生きて帰ろうだなんて虫が良すぎる話、認められるはずがない。
「…………」
恐怖は、ある。
当たり前だ。死を前にして恐れぬ人はいない。だが、彼らの大願を叶え、そして彼らの下へ逝くことこそが、オレの贖罪に違いない。
これで、本当の''終わり''だ。
光へ手を触れる。身体が引っ張られる。視界が白く染まった。
† †
「ここは……?」
風が体に吹き付ける。少しの肌寒さを感じながら、オレは瞼を開いた。
「なっ!?」
オレは見知らぬ草原に立っていた。周囲に壁はなく、あるのは果てしない大空。いつも鉄城の隙間から覗き見るだけだった空が、視界いっぱいに広がっていた。
ならば、ここはアインクラッドの外だと言うのだろうか。いや、違う。外は外だが、もっと厳密に言うのならば、頂上。約一万もの人間を閉じ込めた鉄城の、最も高き場所。全てのプレイヤーが切望した最後の層。
だとするのならば、オレの背後には?????
「?????『紅玉宮』」
草原、いや、このフロアの中心に建つ巨大な真紅の建築物。
そう、これこそが『紅玉宮』。
茅場のシナリオ通りに進んでいたならば、ここで、この世界最後の戦いが繰り広げられたであろう場所だ。
ならば。
紅玉宮の中で、勇者の訪れを待つ人物は一人しかいない。
「そうか」
そうだ。
まだ、''終わり''なんかじ
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