第十六話:崩れ落ち行く鉄城で
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君は強い。間違いなく、あの世界の最強は君でしょう。それは、君が皆を守ろうとしたからだと確信しています。他でもない、己の意思で守りたいと願ったから、貴方は英雄として生きている。
故に、君が英雄である限り、君は再びこの世界に戻って来る。
そう、まだ、終わってなどいないのです。兄の研究に根ざした人間の悪意は、容赦なく君を食い潰しに来るでしょう。それは最早ただの私の想像ではない。
それでも君は、その背に何もかもを背負って戦いに往くのでしょう。それに対して、私には、祈ることしかできない。
ああ、愛しき君の旅路に祝福を。この電子の海から、私は何時までも君を見守っている。
† †
どこか、悲しい夢を見た。曖昧で、頭はハッキリせず混乱しているが、大切な人が手に届かない遠くに行ってしまった、そんな夢だった気がする。
「……ぁ……っ」
意識が回復すると同時に、体の至る所に激痛が走った。悲鳴を上げようとした喉にさえ、鋭い痛みがある。
何故かうまく力の入らない瞼を無理矢理持ち上げると、目が痛くなるほどに白い天井が飛び込んでくる。
ある程度目が慣れた所で、体を起こそうと、力を入れる。だがまるで力の入れ方を忘れてしまったかのように、この体はビクともしなかった。代わりに、再び全身に痛みが走る。
「……あ」
絶え間ない痛みの波の中で、ふと左手に温もりを感じた。なんとか首だけを動かしてそちらを見る。
「?????ああ」
そこで寝息を立てる人を見て、全てを思い出した。
そうだ。俺は、帰ってきたのだ。あの電子の牢獄から、生きて。
払った代償は、余りにも大きい。だが、今は、この子の顔が見れて良かったのだと思っておこう。
「……帰って、きたんだな」
あの世界に、未練はまだある。それでも前に進むのだ。オレに託してくれた、あいつらの為に。
オレは、この世界で生き続ける。
to be continued
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