第十六話:崩れ落ち行く鉄城で
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もんじゃないぞ。胸張って、現実に帰れ」
「それは違う! 俺達がヒースクリフを倒せたのはお前が?????!」
「そんな細かいことはどうでもいいんだよ。いっそ自慢してくれ。『俺がSAOをクリアしたんだ』ってな。そっちの方が、あっちで見つけやすいだろ?」
そんな身も蓋もない言い草に、キリトもアスナも呆れたような表情をしていた。
「相変わらずだね、レン君のそういうところは」
「なんとでも言え。オレにだって変わらないものはあるさ」
そう、変わらないものはきっとある。オレという存在にこびり付いた物は、そう簡単に剥がれおちたりはしないはずだ。あの後悔も、無力感も。
オレは一生、それらと向き合って生きていくのだ。
「……じゃあな、キリト、アスナ。あっちで会える日を楽しみにしている」
「俺もだよ、レン。またな」
「きっと、探し出すからね!」
時が来た。泣き笑いのような顔をした二人が光に溢れ、そして、消えて行く。
程なくして、このフロアにいた全てのプレイヤーは光の粒子に姿を変えて消えていった。暗いフロアを照らすその光の乱舞に、しばらくオレは、目を奪われていた。
† †
しばらく経って、オレは体力と精神力の限界を感じて背後の壁に凭れかかった。恐らく、彼らは程なくしてこの世界から解き放たれるだろう。あの茅場の事だ、嘘はつくまい。
そして、そのプレイヤーの一人でしかないオレにもその時は間も無く訪れる。
「……ごふっ…」
だが、この身に刻まれた痛みは消えず、この身体もまだ残っている。
最早、心も身体もボロボロで立ち上がる気力すらないというのに、オレは往生際悪くこの世界に留まっている。
「あれだけ終わりを望んでいたくせに、いざ終わるとなるとこれか……」
全くもって往生際が悪い。あいつらの望みを叶えたというのに、なぜこんなにも虚しいのだろうか。
いや、答えなんてわかっている。
ここで死んで行った彼らとオレを繋ぐものは、この世界にしかないのだ。
だが、その世界は今正に崩壊しようとしている。
下層から崩壊していっているのだろうか。オレのいるこのフロアは外壁が崩れ落ちる程度だが、地響きと破砕音は先程から激しくなるばかりだ。
今も、このフロアを形成する柱が一本凄まじい音をたてながら倒れた。
「?????…?」
その、向こう。恐らくこの層の上へ繋がる階段の入り口。最早用済みとなってしまったその場所に、あり得ないものを見た。
「ネ、ロ??????」
紅の衣装に、金の髪。そして何より、こちらを見据える翡翠の瞳が、オレの知る彼女と一致していた。
「そんな、バカなことが……」
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