第十六話:崩れ落ち行く鉄城で
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「レン!」
「……よう、どうやらユメの方が先みたいだな」
白コートの裾を引かれる。振り返ると、泣きそうな顔をしたユメが立っていた。そんな彼女の身体はほぼ全身が光の粒子に覆われていた。
「そんな顔をするなよ。また会えるさ」
そう、また会える。俺たちは生きているのだから。
遂に溢れてきた涙を指先で拭ってやる。
「絶対だよ」
「ああ。絶対、会いに行く」
「…ん! ならばよし!」
流石の強がりで、ユメは涙を乱暴に拭った。そして、オレから一歩下がって、
「またね!」
そう、笑顔で消えていった。少しばかりの別れだ。きっと、探し出してみせる。
「ユメさんとの別れは終わったのかい?」
「別れって程大袈裟じゃないだろう。お前ともだ、ディアベル。さっきはありがとうな。お前がいなければ、ユメを助けることはできなかった」
隣にはいつの間にかディアベルの姿があった。よく見なくても、その騎士の象徴たる青き鎧はボロボロだ。それだけ、身体を張ってくれたのだ。
「君には返しきれない恩があるからね。あれで、少しは返せるといいんだけど」
「さてな。言っておくが、オレは貸したものはキッチリ返してもらう主義だからな?」
「……お手柔らかに頼むよ」
苦笑いするディアベルに、オレも吊られて笑みを浮かべる。出会った当初は気に喰わない奴だと思っていたが、長く付き合ってみるものだ。
「じゃあな、ディアベル」
長く共に戦った戦友に拳を突き出す。その意図を考えるまでもなく、彼は理解したようだ。
「ああ。また会おう、レン」
互いの拳をぶつける。籠手の堅い感触を感じた直後、彼もまた、光に包まれて消えていった。
「レン!」
「レン君!」
今日は名前を呼ばれる事が多い。仲良く同時に呼んできた二人に、思い切りウンザリした顔を向けてやる。
「見せつけてるのか?」
「なっ」
パッ、と二人で繋いでいた手を離す。どうせ喜び合って無意識にだろうが、その無意識を意識させるのがオレとユメの役目だ。だがまあ、今日のところはここまでにしておこう。
「冗談だ」
「お前は無表情だからタチが悪い!」
無表情、か。さて、そんなつもりはないのだがな。寧ろ、昔は表情がコロコロ変わって面白いと妹達に言われたものだが。
いや、変わってしまったのだったな。もうオレは、昔のようには笑えないのだろう。
「……レン君」
「どうした、うじうじアスナ」
「うじっ…!?」
だからと言って、感傷的になるのはもうやめだ。今この場に、それは相応しくない。
「このゲームをクリアした二人がそんな辛気臭い顔をする
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